研究課題/領域番号 |
20J21936
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣瀬 葉菜 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 光起電力 / ディラック半金属 / スピン流 |
研究実績の概要 |
対称性の破れが無く、スピンが縮退しているビスマスにおいて円偏光照射下での光起電流発生が観測された。今までの知見では説明できないこの高効率な光子スピン-電流変換現象には、ビスマス原子の大きなスピン軌道相互作用に起因する新規な機構が潜んでいると考えられる。ビスマスに限らずワイル半金属などの特殊な系での光起電流発生現象の包括的理解のためにもこの新規機構の解明が必要である。そこで、本研究では、光子スピン-電流変換現象の機構をスピン軌道相互作用が大きな重金属において明らかにし、この変換機構にスピン軌道相互作用がどう関与するのか解明することを目的とする。
本年度は 、タンタルやタングステン、白金などの金属薄膜とビスマス薄膜のヘテロ構造を成膜し、円偏光の吸収率測定と円偏光照射下での起電流測定を行った。その結果、Bi単層と比較してヘテロ構造で発生する起電力が変化することがわかった。具体的には、スピンホール角の符号が異なるWとPtをBiの上に積層し、起電力測定を行った。円偏光照射によりBi内でスピン流が発生し、逆スピンホール効果で起電力が出ているとすると、WとPtを上に堆積した場合、逆の応答が出るはずである。しかしながら、どちらのヘテロ構造も起電力が若干増加するだけであった。このことはBiとW、Ptはキャリア密度が桁で違うため、Biでスピン流が生成されW、Ptに進入しても、輸送測定に大きな影響を与えないと考えることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルスによる感染症拡大のため、半年間通学することができず、実験ができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は光で誘起されたヘテロ構造界面の影響をより詳細に調べるため、光吸収測定と起電力測定を系統的に行う。具体的には、大きなRashba効果が発現するとされるBi/AgやBi/Cuなどのヘテロ構造を作製し、光応答測定を行う。界面とバルクからの影響を調べるため、光の入射角度を変えて測定を行う。
また、起電力を誘起する非線形光学効果のメカニズムを解明するため、理論などを専門に扱うグループと連携し、研究を推進する。これまでは円偏光照射によって電子のスピンが偏極し、光の進入長が有限であるためにスピン偏極の濃度勾配が発生、生じたスピン流が逆スピンホールによって電圧に変換されるモデルを検討してきた。しかし、このモデルで説明できない結果が得られており、他のメカニズムを検討する。特に円偏光照射による創発電磁場など、最近フロッケ理論などを用いて議論されている現象に着目する。
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