この研究課題では、ラマン顕微鏡に適合したマイクロ流体デバイスを使った灌流培養、ライブセルラマン計測、そしてFISHによる遺伝子型同定を組み合わせ、多様な遺伝型を持つ細胞集団での高速フェノタイピングを目指している。令和5年度は、これまで開発を進めてきた石英ガラス基板のマイクロ流体デバイスおよび人工バーコード配列を転写する発現カセットを統合した計測系の開発を目指した。 初年度から課題だった低いFISHシグナル強度は、昨年度T7プロモーターを使うことで解決したが、内在性T7ポリメラーゼが必要になった。これを解決するために、アラビノースプロモーターの下にT7ポリメラーゼを組み込んだユニットを、これまでバーコード発現に使っていたpET-His-Barcodeベクターに挿入した。このコンストラクトを大腸菌BW25113株に導入し、smFISHを行ったところ、株を区別するのに十分なシグナルを得ることができた。一つのベクター上に全ての構成因子を搭載することができたので、このバーコードを拡張することで多数の株を判別することができると考えられる。 また、動物培養細胞に対しての適用も検討するため、昆虫由来の培養細胞Pv11細胞での発現を目指した発現カセットを設計・構築した。ネムリユスリカのU6プロモーターにバーコード配列を挿入し発現カセットを作成した。これらをPv11細胞に導入し、一過性発現でのバーコードsmFISHで検出を試みたが、十分なシグナルは得られなかった。形質転換効率に起因すると考えられたため、今後は薬剤セレクション後のFISHも検討する予定である。 今後はこれらを拡張し、この課題の目標である多数の株でのラマンPhenotypingおよびFISH Genotypingを目指す。
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