研究課題/領域番号 |
21J00588
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 拓也 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2026-03-31
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キーワード | ライプニッツ / スコラ学 / 形而上学 / 様相論 / 知恵 |
研究実績の概要 |
本研究は、ライプニッツのドイツ・スコラ的起源を歴史的・哲学的に解明することで、逆に形而上学史におけるライプニッツの真に独自な点を明らかにすることを目的とする。研究第一年次である本年度は、全体のプロジェクトに配慮しつつ、特に様相論の検討に従事した。具体的な成果は以下の通りである。 1/様相に関するライプニッツの初期の立場が成熟期のものから大きく異なることを文献学的に確認した。初期には可能世界論が認められず必然主義を脱していないといった従来の論点にとどまらず、可能性や存在者などの概念自体の理解が一種の現実的主義的立場にあること、またそれがケッカーマン、ティンプラーらに対するカロフ、トマジウスらルター派による批判という論争のなかに位置づけられることが明確になった。さらに、初期から成熟期への思想展開を跡付けるべく、可能性概念の諸相を三種の神の存在証明と関連付けて検討し、先行研究に見られない諸論点についての見通しが得られた。 2/様相論と形而上学概念の関係について、一つの転機となる1670年代末のテキストを、『結合法論』等初期の著作と比較しながら分析し、様相論の発展が形而上学概念の変化と結びついていることを示した。 3/ライプニッツにおける様相論と形而上学概念の関連を検討するために、従来見過ごされてきた神の知恵概念が鍵となることを再確認し、彼の著作におけるその体系的な分析に着手した。当概念は神学・形而上学のみならず、自然学や道徳学その他においても重要な役割を与えられており、諸学の連関、あるいは形而上学の必要性と有用性を深く理解するために不可欠であるとの認識を得た。 本年度はパリ第一大学を研究拠点とし、以上の内容について学会・研究会で発表を行った。またオンライン開催のものも含めフランス国内外の学会で関連する分野の研究者と交流・議論することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「知恵」自体が、形而上学概念と神の知恵概念の双方と密接に関係する重要概念であることに改めて気づき、当初の計画を多少変更してその概念史的調査に傾注した。そのため様相論の検討がやや遅れているが、本研究全体の観点からは進捗に問題はないと考えられる。またパリ第一大学での授業担当と業務に慣れるのに時間を必要としたが、神の存在証明等複数のテーマに関して新たな発見があったので、今後の研究に活かしたい。
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今後の研究の推進方策 |
ライプニッツの様相論との関連で、全可能事の実現可能性を巡るファブリとアリアガ間の論争、クラウベルクにおける世界の複数性批判、シュタールやトマジウスによる、「諸事物の本質は永遠である」という規則への注解等を分析し、それらがどのようにライプニッツの思想形成に寄与しているかを見定める。また、神の存在証明を主題とする学会発表を行い、この点に一定の区切りをつける。 これらと並行して、ドイツのスコラ学における形而上学概念の本格的な調査に入る予定である。そのために、スコラ哲学者らの基本情報を整理する基礎作業に着手する。 引き続きパリ第一大学を中心に調査研究を行うが、状況が許せばドイツ、ベルギー、スイス等に短期研究滞在したい。
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備考 |
リサーチマップ https://researchmap.jp/thpm
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