研究課題/領域番号 |
21J00588
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 拓也 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(CPD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2026-03-31
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キーワード | ライプニッツ / スコラ / 西洋近世哲学 / 形而上学 / 神学 / 知恵 / 様相 |
研究実績の概要 |
本年度もパリに滞在し、ライプニッツとスコラ学の双方について次の研究を進めた。 1.パリ、またリスボンにて、神の存在証明についての発表を行った。パリ期において、複数の証明がどう相関し始めるかを発展史的に分析し、存在論的証明と、1/永遠真理と可能事の事象性からの証明、2/必然的存在者概念の可能性のアポステリオリな証明、3/可能事の実在要求説との相関という三点を示した。 2.神の存在証明の漸次的連関を通じて、比較的相互に独立していた二つの形而上学プロジェクトがその統一へと向かう過程を跡付けた。こうした神の存在証明・様相論・形而上学概念の統合の方向性の中で現れる中心概念として、神の知恵概念が浮かび上がった。この点はパリ開催の別の会議で発表された。 3.『ライプニッツ研究』に掲載された論文では、神の知恵概念が知恵概念とどう連関しているのかという問いを扱った。1/神の知恵はその多様な特性を通じて、人間の知恵一般、至福の学・形而上学・普遍学という三つの学として現れるかぎりでの人間的知恵、さらにそれら諸学の動的連関を縦横に貫く導きの糸として機能していること、2/ここに、アリストテレス、近世のスコラ学者たち、デカルトの知恵概念との重要な相違が認められることの二点を主に明らかにし、ライプニッツにおける神の知恵概念の哲学的・哲学史的インパクトを示した。 4.存在(者)の一義性/アナロギアのプロテスタント圏における受容・変容という問に着手するのに先立ち、17世紀ルター派学者二名のテキストに依拠し、一義性とアナロギアについての当時の主要な理解の一つを体系的に再構成することを試みた。 5.ジュネーブにてスコラ学における神の全知概念についての発表を行った。主にルター派のカロフの神学著作に基づき、ルター派に加え近世のカトリック、改革派、ソシヌス派、アルミニウス派等の原典の該当箇所を幅広く参照し、諸争点を明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に様相論の検討に従事することが当初の予定であったが、複数の重要な会議・研究会に招待されたこともあり、他の諸テーマも併せて検討した。結果的に、全体として本研究を十分に進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、まず、夏にドイツで開催されるライプニッツ国際会議での二つの研究発表に向けて準備する。1/『結合法論』(1666)における形而上学概念とその先行者の検討を行う。2/’Physico-theology’という最近新たな注目を浴び始めた17世紀後半以降の思想的伝統において、神の知恵概念が主題化されている。ライプニッツをこの伝統と関係づける可能性とその問題点等について考察する。 次いで、一義性とアナロギアについての基礎作業を踏まえ、未研究の複数の神学・形而上学文献を分析し、近年の代表的研究とは別の解釈を提示したいと考えている。
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