研究課題/領域番号 |
22KJ0520
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 拓也 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(CPD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2026-03-31
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キーワード | ライプニッツ / 近世のスコラ学 / アブラハム・カロフ / 物理神学 / 神の知恵 / 形而上学 |
研究実績の概要 |
本年度も、パリ第一大学のソルボンヌ近世哲学研究所を拠点に活動した。欧州滞在を通じて知ることができた現地の学界の現況については、日本ライプニッツ協会のシンポジウムにて報告している。
研究の内容面では、ライプニッツとスコラ学の双方について主に次の研究を進めた。 1/ドイツの学者Abraham Calovにおける全知概念の考察。神の認識Scientia Deiは、神学の一問題にとどまらず、重要な哲学諸概念を鍛え上げてきた神学と哲学の界面である。本研究では、幅広い哲学者・神学者への参照を含むカロフの論述に依拠して当時の論争の全体像を浮かび上がらせた(Revue des sciences philosophiques et theologiques, Vrinに掲載予定)。 2/ライプニッツの初期著作『結合法論』(1666)序文における形而上学理解の研究。この「形而上学」は、通俗的存在論Ontologiaに還元されるものではなく、実際にはカロフを含むスコラ諸派やルルス主義など多様な形而上学の独自の反映であることを示した(ドイツの国際会議で発表後、出版済:Vortrage des XI. Internationalen Leibniz-Kongresses)。 3/ライプニッツと「物理神学」における「神の知恵」概念の比較研究。後期ライプニッツにおいて、神の知恵概念は神学や形而上学のみならず自然学においても重要な役割を果たしている。論文 Leibniz et la physico-theologieでは、当概念が、ライプニッツ固有の哲学的鍵概念であることを、英国でR. ボイルらによって創始されプロテスタント圏に拡大した思想運動との比較において一層明確にした(国際会議で発表後、出版済:Vortrage des XI. Internationalen Leibniz-Kongresses)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の成果に加えて、1/初期ライプニッツ形而上学における本質・実在・存在者概念の解明、2/初期の形而上学概念から後期の形而上学理解への変遷の再構成、3/この変遷を導く、神の存在証明の諸形式の連関の分析、4/後期ライプニッツの世界創造論における、「実行の自由libertas exercitii」と「選択の自由libertas specificationis」というスコラ的区別の問題の検討を行い、それぞれについて仏語論文を準備している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、上記の論文、および「可能的なものの事象性」を扱う論文の出版に向けた作業を優先的に行う。また、特にカロフの哲学諸著作がライプニッツのエンサイクロペディアの構想に及ぼした影響を考察する予定である。
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