研究課題/領域番号 |
21J00645
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
千坂 知世 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 選挙権威主義 / EMBs / 抗議デモ抑止 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、権威主義体制下における国会選挙に焦点を当て、独裁者が権力維持のためにどのように選挙を操作するのかを明らかにするものであった。1年目にあたる当該年度は、2021年10月~2022年3月までの半年間、本研究の理論部に取り組んだ。具体的には、先行研究レビューを通して次のような仮説を構築した。その独自性と先行研究への意義は主に2点ある。 1)選挙「後」の操作の理論化 独裁者による選挙操作は、選挙権威主義研究や不正選挙研究における主要なテーマであり、既に数多くの理論的考察が蓄積されてきた。しかし、既存研究の視点は、選挙前、選挙期間、投票日に偏り、選挙後については数少ない。一般に、選挙後の紛争処理については、野党が不正疑惑を異議申立てしても与党のエージェントである司法や選挙管理委員会によって無視されるか、与党に有利な判決が出て、結果が覆ることはない、とされる。他方、近年の権威主義の司法研究では、司法が与党に不利な判決を下す場合があることに注目が集まっている。本研究では、司法の役割を、選挙管理機関(EMB)に援用し、選挙後いかに支配者が抗議デモ発生を抑止しているのか、という選挙後の操作(manipulation)について理論的考察を加えた。 2)選挙に政治生命が左右されない支配者のEMB関与 1)に関連して、どのような場合に、通常与党びいきと見られる権威主義国のEMBは、選挙後与党による不正(野党による訴え)を認めるのだろうか、という問いに取り組んだ。その際、本研究では、選挙で政治生命が左右される大統領(政権)とは別に、選挙で政治生命が左右されない支配者が存在する権威主義国に着目した。具体的には、そのような国では、両者が選挙管理機関(EMB)を担うために、政権を罰しても、体制の正当性向上を優先するインセンティブが作用しやすい、という仮説を立て、現在その実証に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の理論部については、受け入れ教員とも相談の上、計画通り検討を進めている。当初予定していた実証部の現地調査(イラン)については新型コロナウイルスの影響で実施できなかったが、現在までのところこれまでの調査で集めた資料で対応しており、大きな影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では理論部について検討し、EMBが選挙で政治生命を左右される政権と、そうでない別の支配者によって二元的に管轄される権威主義国の存在に焦点を当てた。今後の研究では、そのようなEMBの二元構造の帰結について理論的に考察する。具体的には、当初の計画で記載した「現職再選率の低さ」のほか、「選挙前のボイコット抑止」、「選挙後の抗議デモ抑止」などにどのような影響を及ぼすのかについて分析したい。 実証部については、先述の理論を象徴するイランの国会選挙をとりあげ、事例分析を進める予定である。 理論部と実証部の成果を合わせ、2022年度中に投稿論文として発表する予定である。
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