研究実績の概要 |
Advanced LIGO/Virgo による重力波検出から、中性子星や恒星質量ブラックホール(コンパクト天体)への観測的制約が近年急速に進んでいる。しかし、この観測されたコンパクト天体の質量分布は、いまだ理論的には理解できていない。近年、これらの重力波天体と密接に関連する Ultra-striped 超新星爆発 (USSNe) が観測されるようになってきた
2021年度の実績として、天文学に依然として未解明であったUSSNeのエネルギー源について、系統的検証を行った。具体的には、Suwa et al.(2015) で計算されたUSSNのprogenitorとなるCO星1.45-2.0Mの7modelについて、1次元流体力学・元素合成計算を系統的に計算して、その結果を基に解析的光度曲線モデルから、対象天体 (SN 2019dge, iPTF 14gqr) との比較を行った。本研究の結果、iPTF 14gqrの光度曲線を流体力学ベースで再現することは困難であり、USSNに見かけ上の「56Ni問題」が存在することを明らかにした。また観測されているUSSNを説明するためには、代替エネルギー源としてマグネター程度の磁場強度と初期周期をもつ原始中性子星からのパルサー風が寄与する可能性を明らかにした。本結果は自身が筆頭著者の論文として国際査読誌(The Astrophysical Journal) にて発表されている(Sawada, Kashiyama & Suwa, ApJ 2022)。
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