研究課題/領域番号 |
21J01634
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古林 太郎 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 進化工学 / 指向性進化 / 実験進化 / 人工細胞 / DNA複製 / 無細胞翻訳 |
研究実績の概要 |
2022年度は、前年度に最適化したphi29複製系を進化に必須となる微小区画(w/oエマルション)系に持ち込むための検討を行った。申請時は野地研の独自技術である微小リアクタデバイスを用いる予定であったが、ホモジェナイザーを用いてエマルションを生成する方法が本研究で用いる自己複製系との相性がよく、進化サイクルを複数ラウンドにわたって高速に回せる、より大きなライブラリーサイズを確保できる、微小液滴サイズを非常に小さくできるなどの性質の良さを重視してこの手法を選択した。phi29複製反応がうまく動作するようなエマルションの作成法を検討し、複製が高効率で動作するような生化学的条件を同定した。 次に、このエマルションが微小区画として重要な2つの機能を果たせるかどうかを検討した。1つ目は「微小空間による1分子の濃縮効果」である。進化にあたっては1区画あたり1コピーのDNAから自己複製反応を行う必要があるが、DNA濃度が低すぎると翻訳されたタンパク質とDNAが出会えず、複製が起こらないことが知られている。私はDNAをpM以下の濃度にした複製反応をバルク・区画化条件で比較し、区画化条件でのみ複製が起こることから、区画が確かに微小反応場として動作していることを確認した。 2つ目は、「機能性DNAの選択的増幅」である。進化実験の入力として与えられる変異体ライブラリ中のDNAは多くが遺伝子機能の壊れた配列であり、野生型より高機能な配列はごく稀である。したがって、微小区画によってDNA集団を確実に1コピーずつ隔離し、遺伝子機能を向上させたDNAだけを効率よく選択する必要がある。私は複製起点Oriをもつ自己複製DNA(DNAポリメラーゼをコード)と、蛍光タンパク(複製に関係ない疑似遺伝子)をコードしたDNA集団を混合して区画内複製反応を行い、確かに自己複製DNAだけが選択的に増幅されることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には予想外にphi29複製反応が動作しないトラブルに見舞われたものの、今年度は区画内での翻訳共役型のphi29複製反応の再構成、その区画内複製反応を用いて機能配列が選択できることまでを一気に示しており、DNAライブラリの進化実験に向けて大きく進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年はエマルション内でphi29複製が連続継代できる条件検討を行ったのち、変異体ライブラリを実際に進化させる予定である。何らかの原因でphi29複製反応を連続継代し続けることが難しい場合は、途中でPCR反応により増幅を補助するなどのバックアッププランも考えていく。
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