近年,金融市場ではデータマイニングとマルチエージェントの活用が進んでいる.しかしながら,その両者の融合が進んでおらず,双方のメリットを生かした技術開発は行われてこなかった.そこで,本研究では,これらの融合技術の開発を行った.まず,金融市場のデータを用いて,PGSGANと呼ばれる,注文生成にサンプリングプロセスを用いた手法を提案し,注文生成において,先行研究より高いパフォーマンスを達成した.そのうえで,その作成したPGSGANを用いて,シミュレーションの定量評価手法を提案し,従来のStylized Factsに基づく,定性的な評価基準と整合性が取れるものであることを示した.さらに,人工市場データマイニングプラットフォームという,人工市場内でデータマイニングの精度評価を行うスキームを提案し,その実例として,金融市場における注文の同時性がデータマイニング手法に与える影響について検証するとともに,このプラットフォームの有効性を示した.また,強化学習手法を活用した,シミュレーションのパラメータチューニング手法について提案し,シミュレーションの定量評価手法と融合させた手法を提案・検証した.この結果,深層学習を用いて,マルチエージェントシミュレーションの妥当性評価と,妥当性のあるパラメータ探索を可能にすることができるということを示すことができた.これらの研究を通じて,シミュレーションとデータマイニングの融合は図ることができた.
|