研究課題/領域番号 |
21J20199
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
曽根 和樹 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | トポロジー / 非エルミート / 非線形 / メタマテリアル / 同期現象 |
研究実績の概要 |
本研究は動物集団などの自己駆動粒子の集団(アクティブマター)において、系のトポロジーに由来する現象を探索し、トポロジカル現象の基本原理の解明を目指している。本年度はアクティブマターでも見られる動的不安定性(非エルミート性)や非線形性に由来するトポロジカル現象を探索した。 まず、非線形な系で典型的に見られる同期現象におけるトポロジーの役割に注目した。同期現象とは、非線形な振動子(たとえば神経の電気信号や蛍の発光など)の集団が周期を揃えて振動する現象である。このような同期現象にトポロジーの考え方を導入することで、振動集団の端だけで同期し、内部ではカオスな振る舞いを見せる状態を実現できることを示した。特に、そのようなトポロジカルな同期状態のモデルにおいて、そのトポロジーを特徴づける指数が非ゼロとなるモデルを構築し、トポロジカルな起源を明確にした。これらの結果によって、散逸のある非線形系でもトポロジカル現象が見られることが明らかとなった。 また、採用までの準備で非エルミート系に特有な例外点と呼ばれる機構で保護される局在固有状態の存在を2次元系で明らかにしたが、本年度はその機構がより高次元でも有効であることを示した。特に、3次元の系で例外点に保護された局在状態のモデルを提案した。このような局在状態は動的不安定性により振幅が増大するようなダイナミクスを示し得る。この性質を利用して、レーザーデバイスへ応用できることを示した。これらの成果を論文にまとめ、論文誌への投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は非エルミート系や非線形系に特有なトポロジカル現象の存在を明らかにした。これらは、トポロジカル現象の基礎理論の解明という本研究の目的において、特にエルミートな線形系と非エルミート系や非線形系との差異を考える上で土台となるものであり、来年度以降に基礎理論の解明を目指すための準備が整ったと言える。特に、非線形系において散逸の効果や強い非線形性があるときにトポロジカルな性質が残るかどうかは不明であったため、本年度の研究で散逸のある強非線形系でもトポロジー由来の局在状態が現れることを示したことは非自明な進展であったと言える。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で解析した非線形振動子系を含む、非線形系のトポロジーを記述するトポロジカル指数の存在を明らかにする。特に、従来の線形系のバンド構造から定義されるトポロジカル指数と同様に非線形系のトポロジカル指数が定義されるかどうか、得られたトポロジカル指数が局在状態の存在と対応するかどうかを調べる。 また、トポロジカル同期状態を含む非線形系特有のトポロジカル現象がアクティブマターで見られるかどうかを調べる。アクティブマターと非線形振動子のダイナミクスの間には対応関係が知られているため、その対応関係を用いてトポロジカル同期状態に類似する現象が見られるかどうかを調べる。
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