研究課題
本年度は、鉄-軽元素系のリキダス相関係を決定するための高圧実験に加えて、本課題の目的である熱力学モデルの構築に重点的に取り組んだ。実験についてはFe-S-C-H合金の融解実験に、熱力学モデル構築についてはFe-C合金のリキダス相関係の構築とFe-FeO系のリキダス相関係の構築に重点的に取り組んだ。Fe-S-C-H合金の融解実験では鉄中の水素量の測定方法を確立することが課題であったが、前年度より多くの試料を作成することに成功し、試料の組成によるマトリックス効果が大きいことが明らかになった。Fe-C合金のリキダス相関係の熱力学モデル構築では、固液の状態方程式と純鉄の融解曲線を基準に、リキダス温度・組成に対する既存の実験データを用いて液体中での相互作用パラメータを評価することができた。それを用いて構築したリキダス相関係は先行研究が実験によって決定した共融点温度・組成を再現した。また、Fe3CやFe7C3といった炭素に富む固体相の融解曲線が実験で報告されているよりも低温であることが示唆された。本結果は国際誌に掲載された。Fe-FeO系のリキダス相関係の構築については、熱力学モデルの構築に必要な液体FeOの密度の測定に取り組んだ。前年度までに50万気圧までの圧力範囲で測定に成功しており、本年度では100万気圧付近での実験を行った。密度を計算するために必要なX線回折プロファイルの取得はおおむね完了しており、密度の値を得たのちに熱力学モデルを構築することを計画している。研究期間全体を通して、Fe-S-O-C系のリキダス相関係や硫黄と水素のメタル-シリケイト分配係数を実験で決定することができ、Fe-C合金のリキダス相関係の熱力学モデルによって熱力学の枠組みを作ることに成功した。
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Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 129 ページ: e2023JB028116
10.1029/2023JB028116