魚類の行動形質の性差を産み出す性ホルモンシグナルの機能を理解するため、これまでに、性ホルモンの受容体を欠損させたメダカを作出し、性行動や攻撃行動を解析してきた。 性行動解析の結果から、メスがオスのアプローチを受け入れて産卵するために、卵巣由来の3つのホルモンがそれぞれの受容体を介して脳に作用する必要があることが分かってきた。これら3つのホルモンシグナル間にどのような関係性があるかを明らかにするため、1つのホルモンの受容体を欠損させた際に、他のホルモンの受容体の発現がどのように変化するかを、in situ hybridizationによって解析した。解析の結果から、3つのホルモンシグナルは互いに独立に機能するのではなく、互いの活性を高めることで、協調してメスの性的受容を高めることが示唆された。 3つのホルモンシグナルの作用点を明らかにするため、それぞれのホルモン受容体を欠損させたメスをオスとお見合いさせ、その際に賦活される細胞群を、神経活動の分子マーカーの陽性面積を計測することで調べた。3つのホルモン受容体のいずれを欠損させた場合にも、野生型のメスに比べて神経活動が亢進しない、2つの脳領域を見出した。これらの神経核が、3つのホルモンシグナルによって賦活される、「メスの受け入れ中枢」であることが示唆された。 これまでの研究内容をまとめ、研究内容を学会で発表するとともに、自身を筆頭著者とする3報の原著論文を学術誌に投稿した。
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