研究実績の概要 |
REEの分布や化学種を同定するための手法開発を行った。放射光施設SPring-8において、新規開発されたX線集光装置を用いて、高エネルギー領域でのマイクロ-XRF-XAFS実験(38~54 keV、空間分解能1ミクロン以下の蛍光X線(XRF)マッピングおよびXAFS分析)を風化花崗岩試料の両面研磨薄片に対して実施した。本研究では、REEのK吸収端励起により、従来のLⅢ吸収端(~10 keV)マイクロ-XRF-XAFS分析で問題となっていた他元素(Fe, Mn, Ti, Baなど)の蛍光X線による妨害を除いた分析を可能にした。また、30 keV以上の硬X線による薄片試料の分析ではマトリクス吸収が無視できることから、標準物質との比較により、サブミクロン領域におけるREE濃度を定量した。 XRFマッピング分析の結果、広域的なREE濃集(Point1)と局所的なREE濃集(Point2)を確認した。それぞれのポイントでのXRFスペクトルを標準試料と比較することでサブミクロン領域におけるREEパターンを取得することに成功した。その結果、Point1はバルクとよく似たCe負異常を伴うREEパターンを示し、イオン吸着型のREEであることが示唆された。一方、Point2はREE一次鉱物に特有な軽REEに富むREEパターンを示し、Ca, P, Srなどの蛍光X線が確認されたことからREEを高濃度に含むアパタイト粒子であることが示唆された。 Fe K吸収端XANESスペクトルはPoint1におけるREEホスト相が粘土鉱物であることを支持し、La(およびNd)K吸収端EXAFSスペクトルはPoint2におけるLa(およびNd)‐Oの結合距離がリン酸塩の報告値と一致することを明らかにした。以上から、風化試料中のREE分布および化学種、さらにはホスト相までを明らかにすることに成功した。
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