本研究は水-粉体金属による燃焼反応を利用し,大推力小型宇宙機用推進機の実現を目的としている.本研究にて得られた水蒸気流れ場中でのアルミニウム粉末燃焼実験の結果は論文としてまとめ,TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCESに掲載されている. 今年度の研究の推進方策では1)推進機実機を念頭に置いたブレッドボードモデル(BBM)の開発,および2)金属燃焼によって生成される凝縮性粒子の観察,の2点を挙げていた.本件に関して,2023年度よりチューリッヒ応用科学大学との本格的な共同研究を開始した.共同研究により,小型パルス式粉体供給機の開発および噴射特性の取得を完了した.本結果はパルス式供給が定常供給を上回る噴射特性を持つことを示しており,この結果は現在論文としてまとめている.科研費による研究成果であることも踏まえ,国内論文誌へ投稿予定である.また,本粉体供給機と0.1Uオーダーの小型燃焼室との統合を完了した.これにより実機により近いパルス式連続作動や,ノズルから排出される凝縮性粒子の観察が可能となった.ハイスピードカメラやバンドパスフィルターを用いた観測により,凝縮性粒子のほとんどが1 mm以下であり,スペースデブリ抑制の観点からの規制を受けないであろうことが分かった.また,精密な粒子径観測において,アルミニウム蒸気や一酸化アルミニウムなどの輝線観測が有効であることが分かった. 以上により,今年度はチューリッヒ応用科学大学との共同研究の本格化,ブレッドボードモデルの開発,および凝縮性粒子の観察と径取得を完了した.
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