研究課題/領域番号 |
21J20737
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 将汰 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 粒子加速 / 衝撃波 / プラズマ / 超新星残骸 |
研究実績の概要 |
宇宙空間から飛来する高エネルギー粒子である宇宙線のうち、我々の銀河系内で生成されていると考えられている成分は、超新星残骸と呼ばれる天体における衝撃波で加速されていると広く受け入れられている。しかし、宇宙線観測や超新星残骸からの電磁波観測には、標準的な衝撃波加速理論で説明できない事実が存在する。本研究では、標準的な理論で考慮されていなかった、衝撃波が伝播する空間の非一様性を取り入れて、宇宙線加速への影響を調べる。 本年度の研究では、宇宙線の周辺環境への反作用が無視できるような状況を考えて、宇宙線をテスト粒子として扱う数値シミュレーションコードの開発を行い、非一様媒質中を伝播する衝撃波での粒子加速を調べた。数値シミュレーションでは、流体方程式の時間発展を解くことで、媒質の非一様性と衝撃波の相互作用と、それにより生じた波動の非線形発展を再現できるようにした。本シミュレーションにより、非一様媒質と衝撃波との相互作用の結果、衝撃波下流に音波が生成し、その音波によって粒子加速が促進されて、宇宙線のエネルギー分布が変調されることを明らかにした。 さらに、共同研究者との議論の中で、宇宙線による新しい磁場生成機構を発見した。宇宙線が運ぶ電流に対し、熱的電子が応答してこれを打ち消すような電流ができるが、これによりJoule加熱が起こる。この加熱が非一様に起こることで、Biermann batterと呼ばれる効果により磁場が生じる。この磁場生成機構により達成できる磁場強度の見積もりや、これまでに提唱されてきた他の生成過程との比較を行い、今回発見した生成過程が初期宇宙の磁場生成にとって重要となる可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、宇宙線の反作用が無視できるテスト粒子の範囲での数値シミュレーションが実行できた。次年度の研究に向けて、加速された宇宙線のフィードバックを含めた数値計算コードを開発中であり、順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
開発途中の、宇宙線の反作用を取り入れた数値計算コードを完成させ、実際にシミュレーションを行う。また、本年度発見した宇宙線による磁場生成機構に関して、論文にまとめ、学会等で成果報告を行う。
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