研究課題/領域番号 |
21J20742
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宇野 慎介 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | ミリ波サブミリ波 / 電波天文学 / 銀河団 / 偏波分離器 / 直交偏波分離器 / 光学フィルター / 微細プロセス技術 |
研究実績の概要 |
銀河団の動的性質を探る上で、ミリ波サブミリ波帯連続波の多色撮像観測は有用である。本研究課題では銀河団プラズマの運動速度の精密測定を目指して、広視野かつミリ波サブミリ波帯の幅広い周波数範囲を同時撮像できるサブミリ波帯多色カメラを開発している。このサブミリ波帯多色カメラの実現に当たっては、光学系から光子検出器に至る各コンポーネントの広帯域化が重要な開発課題となっている。 本年度は、サブミリ波帯多色カメラの検出器回路において最初段に当たる平面型直交偏波分離器(OMT)を設計した。OMTの性能を特徴付ける結合効率の周波数依存性を3次元電磁界シミュレーションにより計算し、その結果から平面型OMTの開口径で規定される導波管伝搬モードと最大帯域幅との関係を見出した。またその上で、観測帯域に対して結合効率を最大化する設計解を得た。今後の実製作に向けて、OMTに要求される製造精度の見積もり、および製造プロセスの検討が進んでいる。 加えて、フレキシブルプリント基板製造技術を利用したサブミリ波帯光学フィルターの製作・評価を行った。光学フィルターは焦点面検出器モジュール前面に搭載することで観測帯域を切り出し、帯域外放射由来のノイズを低減させる機能を果たす。そこで焦点面検出器モジュールと同等の寸法である3インチ大の広帯域多段バンドパスフィルターを製作、テラヘルツ時間領域分光法による光学測定を行い、期待通りの透過特性が得られることを確認した。十分な口径の光学フィルター製作技術を確立した意義があり、開発した光学フィルターは今後実施する検出器回路の光学試験にも組み合わせて用いることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
OMTの設計および製造プロセスの検討に当初の予定以上に時間を要しているため、本年度に計画していた観測候補天体選定の着手には至らなかった。また、OMTについては低周波3色用・高周波3色用の2通りに対する設計を目指していたが、前者のみに留まった。
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今後の研究の推進方策 |
サブミリ波帯多色カメラのプロトタイプとなる8ピクセルの低周波3色用焦点面検出器モジュールの試作を行う。まずOMTおよび周辺回路素子の設計を具体化した後、回路素子間を結合させた検出器回路基板全体の設計を完成させる。そして設計後は検出器回路の製作および光学試験を実施する。段階的に各回路素子の測定を進めて、最終的にはOMTから光子検出器までの検出器回路にホーンアンテナ、光学フィルターを組み合わせたシステムとして周波数特性を評価する。
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