研究課題/領域番号 |
21J20775
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
島津 舜治 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 維管束幹細胞 / 分化誘導系 / 発光イメージング / 1細胞解析 / 運命制御 |
研究実績の概要 |
維管束幹細胞は、分裂して自らを維持すると共に、維管束組織を構成する木部細胞と篩部細胞を生み出すことができる。近年、維管束幹細胞の多分化能性が実験的に示された一方で、そのメカニズムは未だ不明である。本研究では、維管束幹細胞の運命制御機構を明らかにすることを目的とし、維管束細胞の分化誘導系VISUALを用いた解析を行なっている。その手段として(1)1細胞レベルを含めた遺伝子発現解析、(2)発光イメージングをVISUALに応用することを試みている。 (1)遺伝子発現解析に関しては、これまでに顕微鏡観察やバルクレベルでの時系列遺伝子発現解析を実施し、結果として維管束幹細胞の細胞運命に影響する可能性のある候補因子が見出された。一方で、より詳細な解析が可能な1細胞遺伝子発現解析は条件や解析方法の検討中であり、有効な解析結果を得るには至っていない。 (2)発光イメージングに関してはVISUALに応用する基盤技術の開発が完了し、これらの結果をまとめて論文として投稿中(Shimadzu et al., under revision)である。加えてVISUALだけでなく根の維管束の組織レベルでの発光イメージングも実施しており、上記の解析で抽出した候補因子の生体内維管束における時空間的な動態が可視化できた。
また、VISUALを用いたエピジェネティックレベルの解析も進行しており、候補因子が維管束関連遺伝子に与える影響が明らかにされつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発光イメージングを分化誘導系VISUALに応用する技術開発が順調に進み、まとめて論文として投稿することができた。またVISUALを用いた顕微鏡観察やバルクレベルでの時系列遺伝子発現解析により、維管束幹細胞の細胞運命に影響する可能性のある候補因子を単離することにも成功した。発光イメージングにより因子の時空間的な動態をVISUAL、生体内維管束の両方で可視化することに成功した。一方で当初予定していた1細胞遺伝子発現解析は未だ条件や解析方法の検討中である。総合して、ある程度計画に沿って研究が順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
単離した候補因子の時空間的な動態に注目した解析を進める。分化誘導系VISUALを用いて1細胞レベルで動態を定量化し、細胞運命との関連を調べる。また生体内維管束において、分子遺伝学的な手法により動態を操作し、維管束幹細胞の分裂・分化に対する影響を解析する。加えて候補因子の時空間的な動態に紐づけたトランスクリプトーム解析を行い、維管束の発生における候補因子の影響を網羅的に解析する。また、VISUALを用いたエピジェネティックレベルの解析を引き続き行い、候補因子が維管束関連遺伝子を制御するメカニズムを解析する。 また、継続して1細胞遺伝子発現解析の条件や解析方法の検討を行い、解析に有効なデータを取得する。
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