採用期間前半は、近傍宇宙にありながら形成の初期段階と考えられる極金属欠乏銀河(EMPG)を観測的に研究した(成果1-3)。また、採用期間後半は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の分光データを用いて、銀河形成の謎を解き明かす鍵となる初期宇宙の銀河を直接観測し、星間ガスの性質を調べた(成果4、5)。 [成果1] すばる望遠鏡の深撮像データを用いて、EMPGのサイズを詳細に測定した結果、天の川銀河の約1/10という非常に小さい半径であることが明らかになった。[成果2] ケック望遠鏡の深分光データでEMPGの化学組成を測定した。またEMPGの鉄と酸素の存在比が高いという観測結果を、太陽の30倍以上もの質量をもつ星の超新星爆発で説明可能なことを示した。[成果3] すばる望遠鏡の面分光装置による高精度なデータを用いて、EMPGのガスの速度構造を詳細に解析した。その結果、通常の星形成銀河に見られるような回転運動はほとんど見られず、むしろ無秩序な運動が支配的であることを明らかにした。[成果4] JWSTの公開分光データを用いて、赤方偏移4-9の遠方星形成銀河における星間ガスの密度を世界に先駆けて測定した。その結果、星間物質の密度は遠方に行くほど高くなる傾向が見られ、これは遠方銀河での星形成を理解する上で重要な知見となる。[成果5] 成果2と同じデータを用いて遠方星形成銀河における星間物質の化学組成を探査した。70個の銀河を解析した結果、2個の銀河から窒素輝線を検出し、炭素や酸素に対して窒素の存在比が大きいことを明らかにした。これは、初期宇宙における元素合成の過程を解明する上で重要な手がかりとなる。 上記全ての成果は主著論文として査読論文誌The Astrophysical Journalより出版した。
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