研究課題/領域番号 |
22KJ0588
|
配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
末岡 優里 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-29 – 2025-03-31
|
キーワード | 岩石ー水相互作用 / サポナイト / 鉄酸化細菌 |
研究実績の概要 |
本研究ではこれまで、海洋地殻を構成する形成年代の古い玄武岩質溶岩コア試料を火星岩石のアナログとして用い、岩石内部に生息する微生物生態系について鉱物学的手法および生物学的手法の両面から調査を行ってきた。玄武岩質コア内部では、炭酸カルシウムによって充填された亀裂付近に、低温・嫌気的環境下で、蛇紋岩化反応や玄武岩質溶岩と水の反応に伴って形成する、サポナイトと呼ばれる層状珪酸塩が分布することが確認された。さらに、DNA染色および赤外分光分析の結果、サポナイト周辺に微生物細胞が密集することが明らかとなり、サポナイトと微生物細胞の分布に相関があることが示唆された。サポナイトを含む粘土フラクションから抽出したDNAを用いて16S rRNA解析を行った結果、嫌気環境に生息する微生物の存在も検出されたことから、サポナイトは低酸素状態の岩石環境下おいて、微生物生息場として有望であると考えられる。 サポナイトは、地球の海洋地殻だけでなく、火星の地殻や、リュウグウなどの水質変質を受けた炭素質コンドライト中にも主要な粘土鉱物として広く存在することが知られているため、サポナイトが微生物の生育場として機能する可能性を検討することは、地球外生命探査においても重要であると考える。よって、今後はサポナイトと微生物の相互関係に着目し、サポナイト構造中の二価鉄が、電子供与体として微生物の生育を支持するエネルギー源となりうるかどうかを調査していく。 今年度は、サポナイトを用いた微生物培養実験に向けた準備として、培養環境の構築について検討した。二価鉄を多く含むサポナイトを分散させて作成した培地内に微好気的な勾配を作り、X線吸収微細構造解析を行った結果、培地内部の酸素勾配に伴ってサポナイト構造中の鉄の価数が段階的に変化していることが示され、微生物の培養に適した条件を構築することが可能であることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、サポナイトを用いた鉄酸化細菌の培養実験に向けた準備を目的とした。 培地の条件検討およびX線吸収微細構造解析(XAFS)に基づいて、鉄酸化細菌の培養に適した条件を構築可能であることを確認した。よって、今後培養実験を進めるために十分な進捗を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度検討した培養条件をもとに、サポナイト中の二価鉄をエネルギー源とする鉄酸化細菌の培養実験を行う。サポナイト周辺に生息する微生物に適した酸化還元状態およびエネルギー源について制約を与えることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年10月から2023年9月まで、傷病により採用中断をしていた。 2023年10月からの研究再開に伴い研究計画を再度編成し直したため、助成金を繰り越した。 今年度は、微生物の培養実験およびXAFS実験にかかる経費として使用予定である。
|