研究課題/領域番号 |
21J20861
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
彦坂 晃太郎 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 高圧物性 / 巨大氷惑星 / 超イオン相 / ダイヤモンドアンビルセル |
研究実績の概要 |
本研究では、ここ最近注目が集まりつつある天王星や海王星に代表される巨大氷惑星について、特にその内部に焦点を当て、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いて高温高圧下での氷の性質を調べる研究を進めております。 巨大氷惑星の内部を考察する上で、近年研究が進展している要素としてH2Oの超イオン相が挙げられる。この相は電気伝導度といった性質が既知の氷と大きく違うことが予想されており、巨大氷惑星内で達成される高温高圧条件下で安定に存在する可能性が指摘されている。本研究ではDACを使って水の超イオン相の電気伝導度の直接測定を実現するための技術開発に取り組んでおり、現在までにH2Oのサンプリング手法、電極の素材と配線パターン、加熱方法といった面において進捗を生んでいる。具体的には、常温で液体である水を封入できることと絶縁性であることの2点を満たす適切なガスケット素材や、高温下でH2Oと反応を起こさない電極の検討と実証実験を進めた。さらに、加熱手法については既存の手法よりも電気伝導度測定とはるかに相性が良いレーザー外熱法を導入することに成功した。こちらは電気伝導度測定のみならず、今後行う予定である水素-水系の実験においても成功率向上に役立つ成果であると期待をしている。 また、クライオSIMSを用いたH2O-NH3系の相平衡状態についての測定のための予備実験を北海道大学創成研究機構において行い、今後の測定やスタンダード作製の知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧実験において、これまで報告がなかったレーザー外熱式と呼ぶ新規の加熱手法の実証に成功した。これを用いることで、既存方法では難易度が高かった温度領域(<1000 K)での電気伝導度測定の成功率を上げることができた。この手法によって、水の電気伝導度について先行研究で調べられている圧力温度領域において、整合的な値を測定することに成功している。 また、高温下での水との反応も考慮した電極の工夫をしており、導入されているレーザーの波長域では透明であるため直接は加熱できないH2Oを、電極を温めることによって間接的にレーザー加熱をするための準備が進んでいる。これによって、レーザー外熱では達成できないより高温の実験についても、今後行うことが可能となる。 クライオSIMSを用いた氷試料の分析については予備実験を行い、実験試料及び標準物質を作るための課題を出している段階である。今年度に導入される予定の凍結装置を用いて標準物質作製を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H2Oの超イオン相の電気伝導度測定に向けて、目標温度帯ごとに昨年度実証できたレーザー外熱式加熱とレーザー加熱を使い分けて実験を進めていく。まずは20-40 GPa、1500K付近をターゲットに測定をし、通常の氷と超イオン氷の電気伝導度の差を直接測定によって明らかにする予定である。昨年から検証している手法に加えて、最近導入された非常に高い時間分解能でXRDデータ取得が可能な装置も併せて使用することによって、相転移のタイミングと電気伝導度変化のタイミングを結びつけることを目標としている。 また、水のサンプリング段階についても改善の余地があり、昨年行った実験ではは岐阜大学のコールドルームを借りて-20℃でサンプリングを行うといった作業工程があった。今年度は在学している東京大学で作業が完結することを目指し、DACや試料を氷点下まで冷やすことが可能な冷却板を導入した。 クライオSIMSによる化学分析については、アンモニア-水系試料のスタンダード作製を目指す。今年度導入予定の装置を用いて、アモルファスなスタンダードを作り検量線を決定することを目標とする。 さらに、水素-水系の液体不混和についても、昨年度実証ができたレーザー外熱式加熱を導入して実験を進めていく予定である。当面の間、水素と水の同一試料室へのサンプリングとその存在比の決定が重要課題である。
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