研究課題
本研究の目的は、線形安定論や直接数値計算を用いた先行研究で提唱される「水平流速に弱い鉛直シアが存在する場合、低温低塩分な水が上層に存在する南大洋域や北太平洋亜寒帯域で従来の想定よりも広範に拡散型二重拡散対流が発生し、鉛直の熱輸送に寄与し得る」という仮説を現実の海洋における観測及び数値計算の両面から検証することである。課題最終年度となる2023年度は、過去三年間でJAMSTEC観測船みらい航海(MR21-04及びMR22-03)に乗船し、低温低塩分水が上層に存在し拡散型二重拡散対流が発生し得るとして本課題で注目する北太平洋亜寒帯海域において取得した、水平流速及び水温の微細構造の連続観測データの解析を行った。得られた微細構造観測データからは、観測された高い水温消散率に対応して、従来の乱流鉛直混合の枠組みから推定されるものよりも1桁近く高い鉛直熱拡散係数が確認された。また、拡散型二重拡散による水温・塩分分布階段状構造の発生の実態を探るべく、最新の先行研究によって提唱された水温・塩分の鉛直渦拡散係数を浮力レイノルズ数の関数として表現するパラメタリゼーションを導入する鉛直一次元のモデルによる数値計算を行った。このモデルによって階段状構造が再現された条件は、先行研究の線形安定論から示唆されるものと概ね整合的であることが確認された。さらに、本課題で扱う拡散型二重拡散対流による鉛直熱輸送の役割が重要とされる南大洋域における鉛直混合の分布とファインスケールパラメタリゼーションに関する研究結果をまとめた論文の投稿と出版、及び学会での研究発表を行った。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Geophysical Research: Oceans
巻: 129 ページ: e2023JC019847
10.1029/2023JC019847
Journal of Physical Oceanography
巻: 53 ページ: 2013~2027
10.1175/JPO-D-22-0244.1