昨年度までに,当初の予定の前半部分を占めていた,自然画像に対する視覚誘発電位と画像特徴との関係解析が完了し,国際誌に筆頭原著論文として投稿された.これを起点として,新たにカラーの自然表面画像に対する視覚誘発電位を計測し,それを入力として学習を進める分類モデルや深層生成モデルの構築に着手した.その結果,自然画像の表面を構成する材質のカテゴリや表面特性の分類精度はそれぞれ異なった様子で上昇し,それぞれに固有の符号化過程が存在する可能性が示唆された.また,深層生成モデルを用いた分析では,学習に用いていない視覚誘発電位のみから対応する視覚刺激そのものを再構成することに成功した.この結果は,国内外の学会で発表され,一部の学会では発表賞を授与された.今後は,この周辺のデータ解析やモデルの洗練を試みてゆき,最終的には国際誌へ筆頭原著論文として成果を公刊することを目指す. また,以上のデータに加えて,自然情景画像に対する視覚誘発電位を用いて,自然情景カテゴリや自然情景の特性(自然さ,開放性等)がどのような潜時・部位で符号化されているかということを調べるための新たな解析手法を提案した.その結果は国内の学会で発表し,様々なコメントを頂いた.2022年度の段階では,一般的な分類モデルによる分類を試みているのみだが,今後は,深層モデルを中心とした最新のモデルの利用を推進し,新規の解析手法として論文で提案できる水準まで研究を洗練させる予定である.
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