研究実績の概要 |
本研究は今年度、CirX-1 が近年、軌道周期に沿った周期的な光度変動を繰り返していることに注目し、軌道周期内の描像を明らかにすることを目標とした。これには、大きな有効面積を持つ NICER 装置による観測が最適である。短い観測時間で多くのスナップショットを取得できるからである。我々は軌道周期を 100 分 割し、合計50ksec の観測結果を得た。光度変動では、近星点直前(軌道フェーズ 0.8-1.0(=0))での急減光と、近星点通過後(フェーズ 0-0.2)の急増光という特徴が見られた。光度変動に順次て1周期を三つのパターンに分割し、降着円盤からの放射が見えている「安定期」、視線上に密度の大きな吸収体が存在して見かけの光度が暗くなり、さらに光電離プラズマからの輝線が見えている「dip期」、近星点通過後に激しく光度が変動しつつ、光電離プラズマにより吸収線が観測される「flare期」を定義した。全期間を通して、降着円盤の一部が吸収体によって隠されていると仮定することでスペクトルの全景を説明することができた。線スペクトルはこの降着円盤がプラズマを光電離するとして自己矛盾せず、先行研究でもよく観測されていたFe 高階電離線だけではなく、Mg, Si, Sなどの線スペクトルの解析も行った。
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