研究課題
「聴覚シグナルの分子機構の解明」を目指し、タンパク質の構造およびその機能を解析する実験を行い、筆頭著者としてNature Communications誌に論文を掲載した。また、本年度にProtein Societyを始めとした国際学会で成果を発表したほか、日本結晶学会誌に記事を投稿した。さらに、日本学術振興会の若手研究者海外挑戦プログラムにより米国ノースウェスタン大学に留学し、聴覚シグナルに関連するタンパク質の機能に関してさらなる研究を行った。聴覚は空気振動が耳で電気シグナルに変換されるメカニズムであり、内耳の外有毛細胞の伸縮運動によってごく小さな音まで感知することができる。この細胞伸縮を引き起こすモータータンパク質がprestinで、機能を欠損すると難聴の原因になることが確認されている。本研究ではクライオ電顕を用いた単粒子解析により分解能3.5~3.6Åでprestinの構造解析に成功し、モーター運動の動作モデルを提唱した。Prestinのモーター運動には複数の生理基質が関わっており、これらをそれぞれ加えた構造解析を行うことで、基質の結合がprestinのモーター運動を制御するモデルを提唱した。さらに、外有毛細胞には、prestinの他にも聴覚機能に重要な役割を持つモータータンパク質、myosin 6が発現している。Myosin 6は、複数の難聴患者の報告から遺伝性難聴の原因であることが示唆されているが、そのメカニズムは未解明である。本研究では若手研究者海外挑戦プログラムによりノースウェスタン大学医学部への研究留学を行い、myosin 6の病原性バリアントについて機能解析を行った。その結果、細胞毒性が高まるmyosin 6の遺伝子変異を複数同定し、細胞毒性と遺伝形式の相関性に関する新たなメカニズムを提唱した。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Nihon Kessho Gakkaishi
巻: 65 ページ: 85~86
10.5940/jcrsj.65.85