研究課題
本研究は、身体運動の操作に伴う身体意識の変化が身体近傍空間の空間表象に与える影響を調べることを目的とした。令和3年度から令和4年度にかけて行った心理実験の結果、バーチャルリアリティを用いて手の見た目や運動をそれぞれ左右反転提示した際に、身体近傍空間内における視覚と触覚の整合性の関係が変化することを示した。これは手の視覚表象と自己受容感覚表象が持つ静的な位置情報および動的な運動情報のそれぞれを基準として、手と視覚刺激の相対的な位置関係が表現されている可能性を示唆するものであった。今年度は、脳機能計測を用いて身体性自己意識と身体運動の関係について国外の研究者と共同研究を行った。身体に関わる情報は様々な形で入力されているが、ヒトはこれらの情報をどのように利用して身体運動を実現しているのかという点に着目し、バーチャルリアリティを用いて身体情報を操作した際の脳波を計測・分析することでこれを実現した。具体的な内容としては、手の視覚フィードバックを実際の手の位置からずらして提示し、視覚表象と自己受容感覚表象間の距離を操作することによって両者が多感覚統合される(身体所有感が生起する)条件と多感覚統合されない(身体所有感が生起しない)条件を作成した。これらの条件下でリーチング課題を行い、運動開始直前の脳波を分析することによって、多感覚統合の有無によって視覚情報および自己受容感覚情報の運動計画への寄与の仕方が変化するのかということを調べた。
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Attention, Perception, & Psychophysics
巻: 86 ページ: 285~294
10.3758/s13414-023-02788-0