研究課題/領域番号 |
21J21050
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橘 孝昌 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 教育統計 / 教育調査 / 教育行政 / 教育制度 / 戦後教育改革 / EBPM |
研究実績の概要 |
本年度の主たる成果は、終戦後から1950年代前半の教育調査統計に関する資料を幅広く収集・整理したことにある。 まず文部官僚の旧蔵資料中の関連文書群として(1)「辻田力旧蔵資料」と(2)「文部省調査局調査課資料」(ともに国立教育政策研究所所蔵)を渉猟し、調査統計の企画・調整を担った調査課及び統計課の関連資料を収集・整理した。(1)は戦後改革期の調査(普及)局長であった辻田力の旧蔵資料であり、「統計連絡協議会」等の連絡調整組織の組織規程や会議資料、統計課予算や職員経歴等のデータ、各種統計調査の調査票の原案など、多様な資料が収集できた。また(2)は副題に「飯田晁三旧蔵資料」とあり、戦後改革期に調査課長を務めた飯田晁三のものと比定された資料群である。これにも同様に、調査課主管の調査票原案が多数含まれる他、「各局課調査主管課長会議」や「外国教育調査協議会」といった連絡調整組織の議事次第や議事録が収録されている。加えて、調査課に納入された図書・資料の目録や各局課の資料収集状況が記載された「資料月報」が、1947年5月から1950年1月まで完全揃いで収集できた。以上を通じて、調査原案を含む教育調査統計の形成過程や組織・人事等に関する幅広い資料を収集し、今後の研究を準備することができた。 また『教育統計月報』『教育統計』『月刊教育調査』『教育調査』中の論稿も渉猟した。これらは文部省・教育委員会内の文教統計関係者による記事を多く含み、当時の制度上の諸課題や担当者の問題意識の理解を助けるものである。 教育統計については近年「エビデンスに基づく政策形成」に関連してその重要性が認識されつつあるが、教育行政・政策研究の分野において、その前史たる戦後教育統計の形成過程や歴史的条件に関する研究は乏しい。よって上記成果は、戦後教育調査統計の史的展開の解明に向け、基礎的な史資料の整備として学術的な意義を持つ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
占領終結後の史資料の残存状況が事前の予想より芳しくないために、申請時の計画において予定した、1950年代後半以降の局課資料や人事データの収集に遅滞が生じている。また上記に伴い、当該時期の意思決定過程および人員配置に関する分析と成果公表の計画も遅れている。 一方で、戦後改革期については、調査統計の連絡調整の実態や具体的機能を示す資料の発見により、分散型統計機構の形成時点において既に、調査担当部局による教育統計の「調整」とその限界が存在したことを確認できた。この点は当初の計画を超えて判明した部分である。以上から、全体としては「おおむね順調に進展している」を選択した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、戦後改革期および1950年代後半以降の史資料の渉猟と並行して、これまでに収集した史資料に基づき、文部省内の意思決定過程や教育統計の実施方法、教育統計を担う局課の組織編成及び人員配置といった、教育統計制度の形成過程に関する分析を行う。またこれらを通して、教育統計制度の存在が当時の教育政策に与えた影響や、現代の教育統計制度の抱える課題との異同についても検討する。 その上で、これら教育統計制度を規定した時代的、制度的条件について検討することで、教育統計制度の規定要因についても整理・検討を進める。
|