研究課題/領域番号 |
21J21126
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星川 陽次郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 脂肪酸 / 膜脂質 / 生体膜 / 細胞質分裂 / 分裂酵母 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、奇数鎖脂肪酸がもたらす分裂酵母の生育抑制現象のメカニズムを明らかにすることである。これまで、特に強い活性を示す炭素数15の脂肪酸(FA-C15)を用いて研究を進めてきた。2021年度は主に細胞の形態解析とノンターゲットリピドミクスを実施することで有意な成果を得られた。まず形態解析によって、FA-C15で処理した細胞で隔壁の歪曲化や収縮環タンパク質の局在異常など、細胞質分裂の異常が生じていることを見出した。加えて、FA-C15が小胞体の形態や細胞膜のドメイン構造を攪乱していることが分かり、生体膜に与える効果も確認できた。特に、小胞体の特徴的な形態異常が細胞質分裂の進行を妨げていることを確認でき、FA-C15が引き起こす様々な細胞表現型の主従関係が明らかになってきた。次に、小胞体の形態異常の原因を究明するためにノンターゲットリピドミクスを行い、FA-C15処理による細胞の脂質組成の変化を網羅的に調べた。その結果、FA-C15を取り込んだリン脂質の量が劇的に増加していることが明らかになった。さらに、培地にある種の脂質を添加したり、脂質代謝関連遺伝子に遺伝子変異を導入したりすることによってFA-C15の効果を抑圧することができた。これらの結果から、FA-C15が膜脂質の組成を攪乱し、その下流で小胞体の形態異常や細胞質分裂異常などの細胞表現型が誘導される、という作用経路が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにFA-C15による生育抑制の原因となる細胞の形態異常を複数特定することができた。そして、それらがFA-C15のリン脂質への過剰な取り込みによって生じていることが示唆されてきた。また、FA-C15耐性を示すいくつかの遺伝子変異株を同定しており、生育抑制作用の責任分子の候補が得られてきた。以上を踏まえて、本研究課題はおおむね順調に進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
現在推定されている作用経路を詳細に実証する。具体的には、小胞体の膜構造についてさらなる解析を行う。また、遺伝学的操作によって膜リン脂質の組成を制御し、FA-C15の作用が変化するか調べる。加えて、FA-C15を初めとした奇数鎖脂肪酸と偶数鎖脂肪酸の活性が異なる理由を追究する。そのために、膜リン脂質の代謝を担う酵素を対象にアシル鎖長に応じた基質特異性を調べる。
|