令和5年度は、精神保健に関する保護者の知識・理解を高めるための教育プログラム(改良版)の効果検証を行った。本年度に公立中学校・高等学校に入学する生徒の保護者1000名以上を対象に改良版の教育プログラムを実施し、実施の前後に効果測定のための質問紙調査を行った。具体的には、教育プログラムはナレーション付きのスライドとアニメ動画(各5分程度)からなる短時間の動画であり、精神疾患の発症は10代で増えることや精神疾患は誰でもかかる可能性があること等を重点的に扱った。将来子どもたちと接する立場にある看護学生でのデータ解析も参考に保護者の回答を解析したところ、教育プログラムの効果が示唆された。 本研究課題では第一に、これまでに国内外で行われた教育プログラムの効果検証を系統的にレビューし、その数と質が限られていることを示した。採用文献のプログラムは実施にまとまった時間を要するものが多かった。第二に、短時間で実施可能なプログラムのパイロット版を作成・実施するとともに、質問紙調査の結果から、保護者の知識・理解のレベルに改善の余地があることを明らかにした。第三に、プログラムの効果と普及可能性を高めるべく改良し、改良版のプログラムの効果を検証した。第二と第三の研究への参加に同意した保護者はそれぞれ依頼対象の保護者の8割以上に達し、メンタルへルスへの関心の高い人だけではなくそうでない人の回答も用いて検討できたと思われる。本研究は精神保健に関する保護者の知識・理解の向上を通して、子どもの精神不調の早期発見・対処に寄与しうるものと考えられる。
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