今までの研究では,窓の室内側に付属物がある条件とない条件の比較実験から,床と天井に敷設したPCMの蓄熱効果を検証した。 本年度では,床の仕上げ材の裏に敷設するPCMを対象として,開口部の透過日射の不均等入射が起因となる表面温度分布を考慮した上で,PCMの吸放熱量に関する計算を精緻化した複数表面質点モデルを構築し,提案モデルが異なる位置・厚みに敷設されるPCMの蓄熱効果の違いが精度よく再現できることを示した。窓の室内側に付属物がある条件において,今まで評価が困難であった窓と付属物間の上昇気流に起因する局所的対流熱を考慮し,室内空気温度分布を再現できる複数空気質点モデルを構築し,天井の異なる位置に敷設したPCMの吸放熱効果の違いがシミュレーションにて再現できることを示した。 最終では,標準住宅モデルのLDK室を対象とし,PCMの敷設による暖房負荷削減効果について解析を行った。窓の室内側に付属物がない条件において,床にPCMを敷設する場合,窓に近い部分に一部高凝固点PCMを厚く敷設し,窓に遠い部分では相対的に低凝固点のPCMを薄く敷設するのが暖房負荷削減効果の最大化に有効であることを示した。また,窓の室内側に付属物がある条件において,天井にPCMを敷設する場合,窓に近い部分に一部高凝固点PCMを敷設し,窓に遠い部分では相対的に低凝固点のPCMにすることが有利であることを示した。 日本建築学会において学術発表2件があり、また若手研究者発表受賞1件もあった。
|