研究課題
ロボットがありのままの人の活動環境で様々な作業を行うためには、人間と同様の形状をした等身大ヒューマノイドが、人間と同様に全身を用いて環境・物体・自己身体との接触を駆使して身体支持や物体操作を行う必要がある。そのためには、全身動作制御研究、物体マニピュレーション研究、タスクプランニング研究の分野を横断し身体・物体・タスクの操作を一体に計画・制御することが必要である。令和3年度は、このうちの全身動作制御に取り組んだ。身体の至る所の接触を認識するためには、数十~百kgの質量があるロボットの自重及び動的動作に伴う衝撃力に耐える丈夫さと、全身バランス維持や環境干渉回避のために身体のどの部位が環境に接触しているかを1センチメートル単位で把握する分解能を併せ持つ接触センサデバイスが必要である。本研究ではこれらの要求を解決する接触覚センサデバイスを開発し、国際会議 The 2022 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS 2022) に共著論文を投稿し、現在査読進行中である。また、視覚及び接触覚から得られた外界情報を用いて適応的に多点接触全身行動を行うために、幾何物理拘束の制約に基づく接触部位を限定しない全身行動制御システムを開発した。GUIからの操縦によって、実機の等身大ヒューマノイドJAXONが自らの視覚・力覚・接触覚に基づき適応的に多点接触全身行動を行うことが可能な全身行動制御システムを実現し、日本ロボット学会ヒューマノイドロボティクス研究専門委員会主催の「Humanoid Virtual Athletics Challenge 2021」にTeam Jaxonの一員として参加し、動力学シミュレーション環境内での等身大ヒューマノイドJAXONによる梯子上り行動の発表を行った。
3: やや遅れている
令和3年度の研究実施計画として、以下の2点を書いた。(1)日本の生活環境に多い狭い空間での活動のためには、足以外の身体部位を用いた身体支持や手以外の身体部位を用いた物体操作、あるいは環境との干渉回避が求められる。そのために、身体の至る所の接触を認識し適応的に行動することを可能にする全身触覚システムと全身制御器を開発する。(2)ロボットが環境や物体と適切にインタラクションするためには、ロボット‐物体‐環境間の接触の意味幾何物理構造をロボットが理解し、それによってもたらされる意味幾何物理拘束に応じた行動計画や制御が求められる。そのために、視覚を用いたセグメンテーションに加えてロボットが対象に作用したときの力覚・触覚・視覚情報の変化からロボット‐物体‐環境間の意味幾何物理構造の認識をオンラインで推定・更新する構造認識システムと、幾何物理拘束を数理モデルに変換しオンラインで利用する全身動作計画・制御器を開発する。上記2点に対する令和3年度の進捗状況の自己点検は、以下のとおりである。(1)については、全身触覚システムに用いる接触センサデバイスと接触覚を利用した全身制御器の開発を達成することができた。しかし、接触センサデバイスのロボットの全身への搭載は未達成である。(2)については、幾何物理拘束の制約に基づく全身動作生成・制御器の開発を達成することができた。しかし、意味幾何物理構造のロボットによる理解を行うための認識システムの開発は未達成である。
令和3年度は、全身動作制御に取り組み、低次の知能を開発した。令和4年度は、実際の等身大ヒューマノイドに実世界の様々な状況に応じて適応的に行動させ一連の作業を遂行させる実験を通じて、物体マニピュレーション研究、タスクプランニング研究といった高次の知能に求められる諸課題を解決していく。令和3年度の進捗状況に遅れがあることを踏まえ、研究を加速するために、所属研究室の双腕マニピュレーションあるいは二足歩行の研究者との共同開発体制を整え、双腕マニピュレーション・二足歩行研究の知見を本研究の多点接触全身物体操作に取り入れていく。これに伴い、研究計画調書に記載した令和4年度の研究計画と令和5年度の研究計画の遂行順序を入れ替え、令和4年度の研究計画を令和5年度に、令和5年度の研究計画を令和4年度に遂行するよう変更する。
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