研究課題
令和4年度は、東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻の情報システム工学研究室において、主に等身大ヒューマノイドJAXON及び搭乗型全身外骨格コックピットTABLISを用いて研究を行った。等身大ヒューマノイドが人間の生活環境の物体を操作するためには、等身大ヒューマノイドが人間のように、二足歩行動作に加えて、足以外の身体部位を用いた身体支持や手以外の身体部位を用いた物体操作、すなわち多点接触動作を行うことが求められる。そのためには、全身動作制御研究、物体マニピュレーション研究、タスクプランニング研究の分野を横断し身体・物体・タスクの操作を一体に計画・制御することが必要である。令和4年度は、令和3年度までの本研究で主に取り組んできた多点接触動作から一歩踏み出して、等身大ヒューマノイドの二足歩行動作と多点接触動作と双腕マニピュレーションを統一的に扱うことが可能な環境認識、動作生成、動作制御、及びデバイス制御の手法の研究とソフトウェアの開発を進めた。研究発表としては、国際学会のチュートリアル1件の発表を行った。また、国際学会誌の論文賞を受賞し、国内競技会1件に参加し、共著で国内学会発表5件と国際学会発表2件を行った。令和5年度は、上記システムを完成させ、実機の等身大ヒューマノイドが認識に基づいて環境や物体と適切にインタラクションするための、ロボット-物体-環境間の接触の意味幾何物理拘束に基づいて身体・物体・タスクの操作を一体に計画・制御する手法を明らかにする。
3: やや遅れている
令和4年度の科研費交付申請書に、令和4年度の研究実施計画として次の3点を書いた。(1)搭乗型全身外骨格コックピットTABLISを用いた等身大ヒューマノイドHRP2及びJAXONの多点接触全身操作行動の操縦システムの開発。 (2)ロボット‐物体‐環境間の意味幾何物理構造の認識をオンラインで推定・更新する構造認識システムと、それらの幾何物理拘束を全身動作計画・制御器に利用な形へ変換しオンラインで利用するシステムの開発。(3)令和3年度に開発した接触覚デバイスを身体の至る所の接触の検知を可能にする全身触覚システムへと拡張し、また、動歩行といった特殊なスキルのために必要な認識制御系を動的に構成し幾何物理制約に基づく全身行動計画・制御システムに組み込む枠組みの開発。研究を進める過程で、これらの達成のためには、多点接触と二足歩行と双腕物体操作の3つの分野の技術のインテグレーションが重要であることが分かった。そのため、令和3年度までの本研究で主に取り組んできた多点接触から一歩踏み出して、令和4年度は二足歩行と双腕物体操作の技術の習得・インテグレーションに取り組んだ。(1)については、二足歩行及び双腕物体操作行動においては達成できた。多点接触行動においては準静的な動作にとどまっているが、二足歩行及び双腕物体操作行動と動的な多点接触行動との統合に必要な全身トルク制御手法の研究と実機検証を行い、現在、システム統合のための実装を進めているところである。(2)(3)については、未達成であるが、実機の等身大ヒューマノイドを制御可能な水準を保ちつつ既存の多点接触と二足歩行と双腕物体操作のそれぞれのソフトウェアシステムの全面的なリファクタリングを行うことで、令和5年度に(2)(3)の統合システムを開発するための基礎となる要素技術を明確化した。
令和5年度は、令和4年度までに引き続き、東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻の情報システム工学研究室において、岡田教授の指導の下、主に等身大ヒューマノイドJAXON及び搭乗型全身外骨格コックピットTABLISを用いて研究を行う。ロボット-物体-環境間の接触構造に着目して、歩行と多点接触動作と双腕・全身物体操作を一体に認識・計画・制御することが可能な手法を開発する。具体的には、[制御] ロボット-物体-環境間の接触構造に応じて実機の身体の各部位の接触力とタスク空間剛性を制御することで、歩行と多点接触と全身物体操作を統一的に扱うことが可能な全身トルク制御器を開発する[計画] 階層化と逐次性を利用した、動作制御器・状態認識器との親和性の高い多点接触・全身物体操作の接触遷移動作計画器を開発する[認識] 令和3年度に開発した接触覚デバイスのヒューマノイドの全身へ搭載する[システム] これらを統合した、実機の等身大ヒューマノイドJAXONによる多様な多点接触全身操作を汎用的に実現することが可能な、視触覚環境認識に基づくオンライン動作計画・制御システムの構成法を明らかにする
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すべて 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)