研究課題/領域番号 |
21J21685
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
國武 厚貴 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | エクソソーム / Small EV / DDS / CRISPR screen |
研究実績の概要 |
1,エクソソーム(細胞外微粒子に対する呼称はまだ正確な定義がなされていないことから,以降はsmall extracellular vesicle; small EVとする)の体内動態を一斉に解析するため,ユニークな配列の短鎖RNA(=バーコード)でラベル化されたバーコード化small EVのライブラリーの作成を行った.このバーコードにはsmall EV産生細胞の形質情報が含まれている.マウスにライブラリー投与後, 各組織に含まれるバーコードの量と配列を解析することで,どのような形質をもった細胞の産生したsmall EVが,生体内でどのような分布を示すのかを一斉に解析可能となると考えられる.
2,ライブラリーの有用性を示す一つの証明として,small EV中と細胞中のバーコード量を比較し,small EVの放出に関わる遺伝子のスクリーニングを行った.複数の遺伝子についてバリデーションを行い,実際にsmall EVの放出量を変化させ得ることを示した.また,スクリーニング系を部分的に変更することで,特定のマーカータンパク質を発現するsmall EVのサブポピュレーションに特異的な放出制御因子のスクリーニングが可能であることが示唆された.
3,マウスを用いたin vivoスクリーニングの前段階として,まずはin celluloスクリーニングを行った.具体的には培養細胞に25,000種類のsmall EVを含むライブラリーを取り込ませ,一定時間後に細胞内のバーコード組成を解析した.しかしバーコード検出の感度が不十分であったためか,細胞内で優位に濃縮または取り込み抑制されていると思われるsmall EVを発見することはできなかった.現在よりサイズの小さい300種類のsmall EVを含むライブラリーの作成を完了したところであり,今後同様のスクリーニングを行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要2について,現在論文化へむけてデータの取得中で,スクリーニングによって新規のsmall EV放出制御因子を発見可能であるとを示すことを目指している.スクリーニングの結果を解析することで候補となる経路を発見したが,そもそもどういったデータを取ればよいのかといった点や,アッセイ系の構築に関して,研究室に蓄積されたノウハウのようなものがなく,暗中模索の状態で時間がかかっている.
研究実績の概要3については解析可能なクオリティーのデータをとることができておらず,今後もとにかく試行錯誤が必要な状況になることが予想される.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要2について,共同研究を開始し,論文の結論となるデータの取得を先方と相談しながら進めている.具体的には,現在細胞周期の段階に応じてsmall EVの放出量が変化していることが示唆されているので,細胞培地中のsmall EV量を経時的に測定できる系を開発中の研究者と協力しているところである.
研究実績の概要3については,研究室内でsmall EVを用いた核酸ベクターを開発中のものがいるため,その技術を応用して,バーコード化small EVを取り込んだ細胞が,バーコード情報をゲノム中に保持できるよう改変する.これによりバーコード自体の安定性に関わらず安定したスクリーニングが可能になると考えられる.
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