本研究で目標とする新たなアームは、著しい伸長性能を持ち、剛性変化を兼ね備え、正確な制御が可能なものである。これを実現すべく、インフレータブル構造による伸長性、ジャミング転移による剛性変化、高速ビジョンによる正確な制御といった技術に取り組んできた。前年度までに取り組んだ内容と得られた成果は以下の通りである。 1.高速ビジョンに基づいたインフレータブル構造アームのワイヤ駆動制御 2.多段化に適した二重構造外皮の考案 3.システムの複雑さを軽減するためのワイヤ接続方法の考案 2023年度の活動では、これら要素技術の統合と拡張を目指した。しかし、二重構造の外皮とジャミング転移の両立に問題が生じた。よって構造を妥協し、従来の一重構造の外皮を多段に接続した。また、アーム全体が形状変化を終えた後で内容物を送入する方針とした。これによりジャミング転移を用いた制御自由度の抑制が行えなくなった。しかし、これを実証することがアームの有用性を示すことに繋がると考えられたため、クラッチとブレーキによる代案を考案した。新たに構築したシステムでは、1台のモーターでプーリー1-3個の選択的制御を実現した。多段化したアームの動作については、伸長動作と部分的な選択的形状変形を確認したが、意図した動作を完全には実現しなかった。しかし、調整次第では十分動作可能と考えられ、制御自由度を抑制する目処は立ったと考えらた。これは目的とするアームの有効性を示唆する結果と考えられる。すなわち、将来的にジャミング転移を用いた選択的制御が実現すれば、高い自由度のアームを簡潔に実現できると期待される。 このように計画通り進まなかった面はあるものの、著しい伸長性と剛性変化を併せ持ち正確な制御が可能なアームを開発するという研究目標に対しては、3年間で一定の成果を得られたと考えられる。また、目標とするアームの有効性についても示唆を得た。
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