研究実績の概要 |
脳内の主要な免疫細胞であるマイクログリアは周囲環境の監視・探索によって炎症発生などの環境変化を敏感に感知する細胞である。これまでに、マイクログリアは離れた細胞に拡散性のサイトカインを放出することで情報が伝達されることが知られている (Hanisch, Glia, 2002)。さらに近年、α-synucleinを処置したマイクログリア間で直接突起が連結構造を形成することで物質の受け渡しなどの情報伝達が生じることも報告されてきた (Scheiblich et al., Cell, 2021)。しかし、このようなマイクログリアの情報伝達形態に関して、どのようにして形成されるのか、あるいはどんな情報が伝達されるのかということを包括的に検討した研究は存在しない。そこで本研究では、マイクログリアの情報伝達機構の形成メカニズムと機能的意義の解明を目指している。本研究では、マイクログリアの情報伝達を誘導・実現するものとしてそれぞれ、マイクログリアに取り込まれる、あるいはマイクログリアから放出される細胞外小胞に着目した。 まず、マイクログリアを情報伝達可能な状態への変遷を誘導するものとして、オリゴデンドロサイトの細胞外小胞に着目した。これまでに、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞は、膜表面のホスファチジルセリンを介して、マイクログリアに特異的に送達されることが知られている。前年度までに立ち上げたマウスオリゴデンドロサイトの初代培養から単離した細胞外小胞の内容物 (特にmicro RNARNA) の解析を行った。今後は、マイクログリアの状態変化を誘導するmiRNAを特定する予定である。さらに、今後はマイクログリアの状態変化を誘導する生理的条件をin vivoでも検討するため、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞のみが緑色蛍光タンパクを発現するマウスの作出を行った。
|