研究課題
近距離音響ホログラフィをするためのマイクアレイを動かしたところ、マイク間の同期をハードウェアの都合でうまくとることができなかった。そこで近接音響ホログラフィをすることが可能なマイクアレイシステムを見つけ、調達を行い、それによって皮膚表面の音圧分布の可視化に成功した。それによって、骨伝導の振動部分が一番音漏れが大きいものの、周辺部分での音漏れもあり、その面積は大きいために音漏れに大きく寄与することを明らかにした。音漏れのモデル化については、皮膚は非線形であるため、シミュレーション上における振動の様子が安定せず、少し条件を変えただけで大幅に結果が変わるということがわかった。モデル化の基礎となる予定だったシミュレーションが思うようにうまく行かず、モデル化まで至らなかった。一方で、骨伝導スピーカの音漏れが実際のユーザ体験に及ぼす影響を調査するため、骨伝導スピーカを搭載したメガネ型補聴器に関する評価を行った。そのデバイスを参加者に2週間装着してもらい、ユーザに毎日質問紙に答えてもらい、ユーザ体験を収集した。メガネ型補聴器の装用率向上に必要な要素を明らかにしつつ、骨伝導スピーカの音漏れによってハウリングがユーザから不快な現象としてよく報告された。しかし、骨伝導スピーカの音漏れは空気を伝わってくるものというよりは、メガネ本体を伝わる事によるハウリングが見られ、骨伝導デバイス自体を伝わる音漏れを考慮する必要があるということがわかった。
3: やや遅れている
皮膚の非線形性によりシミュレーションが安定せず、モデル化の基礎ができなかったため。
空気に伝わる音漏れについてはシミュレーションが完成しない以上、モデル化が難しいということがわかった。一方で、実際のデバイスで使用する際は、空気から伝搬する音漏れよりも、デバイス自体の音漏れの寄与が大きいということがわかった。そのため、デバイス内部を伝わる音のモデル化を行い、それを抑止するような構造を検討し、開発する予定である。
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IEEJ Transactions on Fundamentals and Materials
巻: 142 ページ: 390~396
10.1541/ieejfms.142.390