研究課題/領域番号 |
21J22277
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田辺 駿 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 炭素-水素結合活性化 / 触媒的アリル化反応 / 光触媒 / ラジカル |
研究実績の概要 |
アルデヒドの触媒的不斉アリル化反応は複雑分子を構築する際に多用される、有機合成化学における重要な反応の一つであるが、従来法においてはアリル化試薬の調製が必要な点や、それに伴い副生成物を排出してしまうことなど、工程数や原子効率といった観点からまだまだ改善の余地を残している。そこで本研究ではアルケンのアリル位C(sp3)-H 結合から直接的なアルデヒドの触媒的アリル化反応を可能とする触媒系の開発を目標とする。 当初1年目に研究を行うことを計画していた、可視光レドックス触媒/水素原子移動触媒/遷移金属触媒の三成分ハイブリッド触媒系によるアルケンのアリル位C(sp3)-H結合から直接的なアルデヒドの触媒的アリル化反応を可能とする触媒系の構築については、研究が順調に進展し、申請時点から採用までの準備期間に研究成果を論文として報告した。 そこで本年度は当初は2年目に行うことを計画していた、水素原子移動触媒を構造展開することにより本反応の反応性を変化させることに取り組んだ。先に報告した反応において、非対称なアルケンを基質とした場合、その複数のアリル位C(sp3)-H結合間の位置選択性が制御できないため、生成物として複雑な異性体の混合物を与えてしまうということが問題として明確になった。そこでC(sp3)-H結合活性化の過程を担う水素原子移動触媒に電子求引基や電子供与基を導入して結合解離エネルギーを調整することや、かさ高い置換基を導入して立体障害によりアリル位C(sp3)-H結合間の違いを認識することで、位置選択性の制御をすることを試みたが選択性の改善はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では初年度に行う予定であった、可視光レドックス触媒/水素原子移動触媒/遷移金属触媒の三成分ハイブリッド触媒系によるアルケンのアリル位C(sp3)-H結合から直接的なアルデヒドの触媒的アリル化反応を可能とする触媒系を既に確立しており、計画を前倒して、水素原子移動触媒の構造展開により新たな反応性を探索する段階にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
既に開発した水素原子移動触媒を加えた三成分触媒系においては、それ以前の可視光レドックス触媒/遷移金属触媒の二成分触媒系とは異なり、基質に依存しない形式でC(sp3)-H結合からラジカルを発生させることができるため、アリル位以外にも様々なC(sp3)-H結合を活性化し、アルデヒドへと付加させる同様の反応が可能であると考えられる。そこで今後は基質を拡張することで本反応の有機合成的実用性を高めることを目的として研究を推進することする。ターゲットとする反応として、まずはアリル位と同様に比較的結合解離エネルギーの小さいベンジル位やプロパルギル位のC(sp3)-H結合から直接的にアルデヒドへと付加させる反応を開発すべく検討を行っていく予定である。
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