2023年度は有機分子の存在下での後処理手法を2種類開発し、投稿論文2報を執筆した。具体的には、①高Si/Al比のゼオライトは疎水性や水熱安定性が高いことが知られているが、以前報告した酸処理によるゼオライトの脱アルミニウムにおいてRHOゼオライトは酸処理のみでは結晶化度が低下した。そこで、あえて酸処理後で結晶化度を落としたゼオライトに対して欠陥修復処理を実施することで高い結晶化度とSi/Al比を両立できることを示し、Journal of the Ceramics Society of Japan誌に論文を投稿して受理された。また、②MOR型ゼオライトに対してスチーム処理、酸処理、フッ化物処理の3つの後処理手法を逐次的に適用し、29Si MAS NMR、27Al MAS NMR(通常の1次元NMRおよびMQMAS NMR)、FT-IRの各手法により分析した。スチーム処理において既報通り脱アルミニウムおよび欠陥修復が起きていることを示したうえで、27Al MQMAS NMR結果により処理中にAl配置の変化が起こっていることを示した。また、共同研究者の協力を得て第一原理計算およびゲージ含有投影増強波法により異なるAl原子および欠陥の分布に対するNMR化学シフトをシミュレーションして実験結果と比較することにより、27Al MQMAS NMR結果の変化がAl配置変化に対応していることを裏付け、またAl原子が隣接する欠陥に移動しているような変化が発生していることを示した。フッ化物処理においては既報で示されている欠陥修復効果に加えて骨格外Al種のゼオライト骨格への再挿入が起こったことを示した。本研究の成果は英文論文誌に投稿して査読中である。
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