研究課題/領域番号 |
21J22553
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 真大 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 多孔性金属錯体 / ラジカル重合 / ラダーポリマー |
研究実績の概要 |
二本のポリマー鎖が平行に架橋されたラダーポリマーは、その構造に起因する高い力学特性、熱耐性などが期待されている。そこで本研究ではラダーポリマーの合成に向け、Metal-Organic Frameworks (MOF) の細孔内での架橋重合を検討した。従来の溶液系での架橋重合ではポリマー鎖の形態制御が困難であり、ランダムな架橋反応が進行する一方、MOF内部ではモノマーの配置や運動が空間的に拘束され、細孔内部でのみポリマーを架橋させることができると考えられる。今年度はMDシミュレーションや重合条件のスクリーニングを通してビニルポリマーのラダー構造制御を実現した。まずMDシミュレーションを行い、ポリスチレンなどのビニルポリマーがちょうど二本入るサイズの一次元細孔を有するMOFを鋳型として選択した。細孔内に二官能性モノマーと共にスチレンを導入し、架橋ラジカル重合を行うと、高い転化率で重合が進行した。キレート剤で処理してMOF骨格を破壊し、ショートカラムでMOF残渣を除去すると、クロロホルムなどの各種有機溶媒に可溶なポリマーが高収率で得られた。1H NMR測定から、架橋剤がポリマーに組み込まれていることを確認した。また,粘度計つきGPC測定から作成したMark-Houwink-Sakurada Plotから、直鎖ポリマーよりコンパクトなラダー状構造の形成が支持された。さらに、生成物の詳細な構造解析とともに物性評価も行った。DSC測定の結果から、生成物のガラス転移点は一本鎖ポリマーと比較し高温側へシフトしたため、ポリマー鎖のミクロな運動が制限されていることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であったポリラダランの合成とは異なるが、本年度はMOFの細孔を利用することで架橋構造をもつポリマーの合成が達成されたほか、各種測定からラダー構造を形成している証拠を示すことができた。今後、得られた生成物の構造解析を進め、一本鎖高分子と性質を比較すれば、ラダー構造特有の物性や機能を本質的に解明できるため、研究は順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はMOFの細孔内での架橋重合により、ラダー構造が期待される生成物の合成に成功した。今後は生成物の構造解析と構造特異的な物性評価を進める。具体的には生成物の加水分解反応により架橋部位を切断し、得られた分解物の分子量分布や配列、立体規則性の解析から、架橋生成物中のラダー構造の割合や架橋の間隔を調べる。得られた知見をもとに架橋剤やモノマーの種類も検討し、欠陥の少ないポリマーの合成を目指す。また、平行して架橋生成物の物性の評価を行う。従来のラダーポリマーの研究では、ラダー構造に基づく高い熱的、化学的安定性を有することが示されている。そこで、本研究で得られたビニルモノマーからなるラダーポリマーでも安定性が向上するか確認を進める。
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