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2021 年度 実績報告書

二枚貝殻中の還元指標元素分析による沿岸域貧酸素水塊挙動の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21J40096
配分区分補助金
研究機関東京大学

研究代表者

杉原 奈央子  東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(RPD)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
キーワード沿岸 / 貧酸素 / 遡及的環境モニタリング / 二枚貝 / 安定同位体比 / 微量元素
研究実績の概要

閉鎖性内湾において発生する貧酸素水塊は沿岸域の漁業や生態系にとって脅威になっている.一方で貧酸素に関する情報はスポット的な観測がメインで全容を把握することが困難である.二枚貝の貝殻の化学組成は生息環境の変化を反映しながら付加成長するため,二枚貝の貝殻から貧酸素の履歴を復元することができれば有用なモニタリングツールとなる.貝殻から復元できる様々な環境情報は貧酸素の発生や挙動を解明するためにも役立つ.本研究では二枚貝貝殻の化学組成から貧酸素の履歴を復元する手法を確立することで貧酸素の全容を把握し,沿岸生態系や水産資源の保全に貢献することを目指す.本年度はフィールドでの試料採取と現場での環境観測,採取した試料の分析準備を実施した.4月と5月に東京湾でホンビノスガイの生貝と死殻をスクーバダイビングで採取し,貝殻の前処理を行った.漁場の試料についても漁業者から東京湾奥の数地点の試料を得ることができた.死に殻については死亡時期特定のための酸素安定同位体比の分析を進めている.東京湾の灯標付着サンプルについては東京大学農学生命科学研究科に保存されていたものを分取し,窒素安定同位体比分析と微量元素分析を行うための前処理を進めている.ホンビノスガイは過去に採取した試料の微量元素組成と酸素安定同位体比を分析した結果,夏季に成長が停止した痕跡である障害輪が形成されており,マンガン濃度も高くなっていることが明らかとなった.この分析結果から貝殻中のマンガン濃度が貧酸素水塊の指標として有用である可能性が示された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度はすでに採取済みの試料の選別,分析準備,新規試料の採取などを行うことができた.また共同研究者らと当初の研究にはなかった英虞湾での貧酸素調査と二枚貝採取を実施でき,淡水流入や撹乱の少ない環境下での貧酸素の実態と貝殻の化学組成の変化について解明できる見込みができたことから当初の予定以上の進捗がみられた.すでに東京湾から採取したホンビノスガイについては安定同位体比・微量元素分析まで完了しており,貧酸素が発生する夏季に貝殻中のマンガン濃度が高くなっていることを明らかにすることができた.また当初計画に加えて東京湾からはホンビノスガイの死殻を大量に確保することができた.この試料の酸素安定同位体比分析を実施し,死亡時期を特定することで,貧酸素が生物の生残に与える影響についても解明できる予定である.コロナ禍で当初計画していた在外研究は実施できなかったものの,国内の試料と海外とのリモート打ち合わせ等で当初の計画をある程度補完することができており,次年度以降のさらなる進捗が期待できる.

今後の研究の推進方策

昨年までに準備した東京湾の灯標から採取したイガイ類および,湾奥水深2-4mから採取したホンビノスガイの安定同位体比分析と微量元素分析を行う.安定同位体比試料は貝殻切片からマイクロドリルで粉末を削り出す.微量元素分析は貝殻切片をレーザーアブレーション ICP-MSで直接分析する.東京湾のモニタリングポスト付近の二枚貝試料を季節ごとに数回採取し,安定同位体比・微量元素組成と環境データの照合を行う.その際微細成長線解析を行なって元素データを時系列にアライメントする必要があるが,ドイツで実施予定であった微細成長線計測システムの開発については海外渡航が難しかった場合にオンラインで打ち合わせをするなどして確立に努める.サンプリングの際には可能であれば採水を行い海水中のマンガン濃度とDICを測定する.DICも貧酸素発生時に値が大きく変わることが期待されており,貝殻の素安定同位体比に反映されると考えられる.それ以外の貧酸素が問題になっている海域(大阪湾,英虞湾,三河湾,有明海)の二枚貝試料を採取して,比較のための分析を行う.またマンガン以外の還元性指標元素,モリブデン,炭素安定同位体比についても検討を実施し,利用可能性を模索する.化学分析のデータの中から還元性指標元素として有用と期待される元素について,海水中の濃度を変化させ,二枚貝の飼育実験を行い,海水中の濃度変化がどの程度貝殻中の濃度変化に反映されているかを調べる.これらの研究成果は速やかに学会発表と論文での成果公表を行う.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Spatiotemporal change of cesium-137 in the Pacific coast of Tohoku, Japan: The mussel watch approach2021

    • 著者名/発表者名
      Murakami-Sugihara Naoko、Shirai Kotaro、Tazoe Hirofumi、Mizukawa Kaoruko、Takada Hideshige、Yamagata Takeyasu、Otosaka Shigeyoshi、Ogawa Hiroshi
    • 雑誌名

      Marine Pollution Bulletin

      巻: 168 ページ: 112413~112413

    • DOI

      10.1016/j.marpolbul.2021.112413

    • 査読あり

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公開日: 2022-12-28   更新日: 2023-08-01  

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