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2022 年度 実績報告書

青年期の非援助要請者を対象とした精神的健康の予防的支援:社会実装に向けた実証分析

研究課題

研究課題/領域番号 21J40150
配分区分補助金
研究機関東京大学

研究代表者

天井 響子  東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(RPD)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2025-03-31
キーワード援助要請 / 中学生 / 思春期 / メンタルヘルス / 介入 / 信頼 / 未来展望 / 学校適応
研究実績の概要

今年度は主に2つの研究を実施した。ひとつは「モデリング効果を意図した動画が未来展望およびストレスに対するポジティブ思考に与える効果」に関する研究である。「中学時代のつらい経験を乗り越えて活躍している大人が語る動画を見ることで,中学生が話者に自分を投影して未来展望とストレスに対するポジティブ思考が上昇する」という仮説を立て,実験条件(インタビュー)または統制条件(教材)の動画の視聴とその前後での測定をを実施した。公立中学校2校にご協力いただき,9月311名(男性154名, 女性148名, 他9名; 実験条件185名, 統制条件126名),10月は295名(男性147名, 女性136名, 12名; 実験条件185名, 統制条件126名)の回答を得た 。分析の結果,1) 短時間の動画視聴であっても,未来展望やポジティブ思考が高められる可能性,2) 動画視聴が未来展望やポジティブ思考に与える効果はいじめられ経験の有無にかかわらず見られること,3) 動画の話者と状況や性別の異なる中学生にも効果を示す可能性の3つが示された。今年度実施したもうひとつの研究は,他者信頼の獲得過程を定性的に明らかにすることを目的としたインタビュー調査である。中学または高校在学中に誰のことも信じられない時期があり且つ現在は信頼できる他者がいる若者34名(男性12名, 女性22名, 平均年齢18.9歳)に半構造化インタビューを行い,信頼できる人と出会ったタイミングや信じられると思うに至るまでの経緯を詳細に伺った。データは現在スクリプト作成を終え,分析中である。 これらの研究のほか、収集済みの縦断データの論文化に取り組み,現在投稿中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請当初は今年度が研究2年目となっていたが,出産・育児に伴う研究中断の影響により今年度が実質的な本研究課題の1年目となる。1年目には,1)他者信頼,未来展望,ポジティブ思考と学校適応の関連の精緻な検討,および2)コーピングとポジティブ思考に対する介入を実施する予定であった。今年度は既に収集済みの3年間の縦断データを用いて上述の1)に当たる分析を行い,3つの個人内保護因子と学校適応の縦断的関連に関する論文を現在International Journal of Adolescence and Youthに投稿中である。また,2)については,申請時はコロナ禍の序盤であったため従来のような学校に研究者が訪問しての対面プログラムによる介入を予定していたが,状況を鑑みて計画を変更した。具体的には,コロナ禍を経て急速に発展した学校現場でのICTを利用し,オンラインでの介入方法を検討することとした。その第一段階として今年度は未来展望とポジティブ思考の上昇を図る介入を実施し,一定の成果を得た。今年度の実験スキーマを基に,コーピング等の他変数についても次年度以降に研究を発展させる予定である。

今後の研究の推進方策

申請時点では,2年目は米国コロンビア大学に一定期間滞在し,初年度に日本で実施した介入を米国でも試行する計画であった。しかし,コロナ禍やその間の出産等を経て,現在は他国での実施ではなく日本での介入プログラムの精緻化,充実化,並びに社会実装を目指す方向に舵を切っている。2年目は,初年度に一定の成果が得られた動画を用いた介入の実装を目指し,他者信頼やコーピング等他の変数に対する効果,介入時期,効果の持続性,効果が持続する条件,効果が見られる動画の条件等の検討を計画している。それらの研究成果を以て,中高生や学校単位で活用可能なICTアプリの開発を計画している。さらに,初年度に収集した信頼に関するインタビューデータの分析と論文化も同時に進める。これまでの研究で他者信頼が非援助要請者の心理的健康に寄与する可能性が示されたものの,先行研究では「受容経験」「承認経験」等の経験が信頼感と関連することが示されているに留まり,他者を信じられない状態から信じられる状態に至るまでの具体的な他者の言動や相互作用,タイミング等は明らかになっていなかった。そこで,他者に対する信頼感の獲得過程を詳細に明らかにし,動画を用いた介入と併せて同時者へ提案していくことを目指す所存である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 困難を克服した他者の動画は中学生の内的保護因子を高めるか2023

    • 著者名/発表者名
      天井響子・清河幸子
    • 学会等名
      日本発達心理学会第34回大会
  • [学会発表] 中学3年間の学校適応変化と内的保護因子との関連2022

    • 著者名/発表者名
      天井響子
    • 学会等名
      日本心理学会第86回大会
  • [図書] 進化精神病理学2023

    • 著者名/発表者名
      マルコ・デル・ジュディーチェ、川本 哲也、喜入 暁、杉浦 義典
    • 総ページ数
      480
    • 出版者
      福村出版
    • ISBN
      9784571500190

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公開日: 2023-12-25  

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