研究実績の概要 |
今年度は主に2つの研究を実施した。ひとつは「モデリング効果を意図した動画が未来展望およびストレスに対するポジティブ思考に与える効果」に関する研究である。「中学時代のつらい経験を乗り越えて活躍している大人が語る動画を見ることで,中学生が話者に自分を投影して未来展望とストレスに対するポジティブ思考が上昇する」という仮説を立て,実験条件(インタビュー)または統制条件(教材)の動画の視聴とその前後での測定をを実施した。公立中学校2校にご協力いただき,9月311名(男性154名, 女性148名, 他9名; 実験条件185名, 統制条件126名),10月は295名(男性147名, 女性136名, 12名; 実験条件185名, 統制条件126名)の回答を得た 。分析の結果,1) 短時間の動画視聴であっても,未来展望やポジティブ思考が高められる可能性,2) 動画視聴が未来展望やポジティブ思考に与える効果はいじめられ経験の有無にかかわらず見られること,3) 動画の話者と状況や性別の異なる中学生にも効果を示す可能性の3つが示された。今年度実施したもうひとつの研究は,他者信頼の獲得過程を定性的に明らかにすることを目的としたインタビュー調査である。中学または高校在学中に誰のことも信じられない時期があり且つ現在は信頼できる他者がいる若者34名(男性12名, 女性22名, 平均年齢18.9歳)に半構造化インタビューを行い,信頼できる人と出会ったタイミングや信じられると思うに至るまでの経緯を詳細に伺った。データは現在スクリプト作成を終え,分析中である。 これらの研究のほか、収集済みの縦断データの論文化に取り組み,現在投稿中である。
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