研究実績の概要 |
作用素環の中でもKirchberg環と呼ばれるクラスはKK-理論と深いかかわりがあり, 通常は計算することが困難な自己同型群のホモトピー群を計算することができる. 分類理論との関わりから, Kirchberg環とそのK-群については様々な先行研究があり, それらを足掛かりに自己同型群のホモトピー群に着目して研究を行った. この自己同型群のホモトピー群を計算する中でKirchberg環に対してReciprocalityという性質を導入した. この性質についての研究を続け, ReciprocalityのもとになるKK-群のSpanier-Whitehead双対がある種の完全性を持つことを証明した. 更に近年松本健吾氏によって発見されたCuntz-Krieger環のToeplitz拡大についての双対性についても研究を行い, この双対性の背後にSpanier-Whitehead双対を用いてReciprocalityと似た構造があることを明らかにした. これらの結果はイギリスCardiff大学のUlrich Pennig氏との共同研究であり, 共著論文としてまとめられている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
松本健吾氏のStrong K-theoretic dualityの研究において当初の予想以上にこの双対性がReciprocalityと似ていることが明らかとなり, さらにCuntz-Krieger環のToeplitz拡大という先行研究の枠組みを拡張し有限生成なK-群をもつ一般のKirchberg環の任意の拡大に対してStrong K-theoretic dualityが成り立つことを証明できたため. さらにこの一般化に際して上記の双対性の新しい側面として, 拡大に自然に付随する2つのexact triangleの役目が入れ替わる現象を見つけ, この現象について理解を深めるという新しい目標ができたため.
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今後の研究の推進方策 |
Strong K-theoretic dualityの研究において明らかになった2つのexact triangleが入れ替わる現象について研究を進める. この2つの入れ替わりはK-群の6-項完全列とExt群の6-項完全列の対応として, strong K-theoretic dualityの中に現れてきたが, この理解を深めることでK-群をfiltered K-群に, そしてExt群を「何か」に一般化できるのではないかという方針を立てている. 当面の目標は, 非自明なfiltered K-群が現れる拡大に対して具体計算を行いfiltered K-群の相方たりえるExt群のようなものの候補を探ることである.
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