研究課題/領域番号 |
22KJ0738
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
鈴木 山海 拓殖大学, 政経学部, 助教
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 近世ドイツ史 / 神聖ローマ帝国 / 帝国宮内法院 / 学識法曹 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
2023年度は、1つめの作業として、1650~80年に帝国宮内法院に勤務した学識者が形成した人的関係を、ネットワーク分析ソフト「Pajek」を用いて図式化した。その際に用いたのは、同法院関係者のプロソポグラフィ研究(Oswald von Gschliesser, 1942)と、2022年度末に実施したウィーン国立文書館で収集した史料である。その結果、出身大学、ならびに法院以外の勤務地(皇帝や領邦君主の宮廷など)の所属関係から、知人関係の実態があるていど明らかとなった。また、この作業のために、「Pajek」の操作方法、ならびにネットワーク分析の手法を学ぶため、社会学や経済学の分野で蓄積されている研究を参照した。加えて、本年度から拓殖大学政経学部の助教職に就いたことにより、社会ネットワーク分析の経験を有する同大学の教員から、研究手法について有益な助言を得ることができ、分析の精度を向上させることができた。 2つめの作業として、17世紀中葉から後期にかけて、神聖ローマ帝国における法学や国制に関する議論がどのように構築されていたのかを、当時を代表する学識者であるヘルマン・コンリング(1606-81年)を中心に分析した。17世紀において、遠隔地交易を掌握していたネーデルラント連邦共和国は、学術研究においてもヨーロッパを牽引する存在であった。ネーデルラントで花開いた共和主義思想の影響が、神聖ローマ帝国にももたらされていたという、学識者間のトランスナショナルな交流の実態が、本研究から明らかになった。また、その成果を、査読論文「ヘルマン・コンリング(1606~81年)研究の現状と展望 ―ドイツ法制史・国制史とトランスナショナルな共和主義研究の邂逅―」(『政治・経済・法律研究』26巻2号に掲載)として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度より常勤職に就いたため、特別研究員を継続する前提で立てた当初の計画から、やや遅れが生じている。当初は長期の在外研究を行い、ドイツ、オーストリア両国において史料の調査・分析を実施する予定であったが、校務のためかなわなかった。よって今後は、複数回に分けて短期の在外研究を行う計画に切り替える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、帝国宮内法院に勤務した学識者について、ネットワーク分析ソフトを用いた解析を進める。これまでの分析で、知人関係の解明はできたものの、内部の交流が親密なものであったのか、疎遠なものであったのか、その程度についてはまだ明らかにできていない。そこで今後は、文書館の史料目録を用いて、書簡のやりとりなど、より具体的なコミュニケーションに基づいて分析を進め、ネットワークの実態解明に努める。 また、昨年度に史料調査を実施した具体的争訟(「ハルバーシュタット対ハルバーシュタット」事件:1672~80年)について、本年度は十分にあつかうことができなかったため、ネットワーク分析と平行して、当該史料の分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度より、拓殖大学の助教に赴任したことで、当該年度に予定していた長期在外研究の計画を見直すこととなった。2023年度の渡航を取りやめ、2024年度に短期の在外研究を行うこととしたため、次年度使用額が生じた。
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