2022年度に開発したモデルは多項プロビットモデルに操作変数法を内包した多項プロビットモデルであり,選択肢相関の完全な記述と内生性への対処を同時に行うことが可能である.提案したモデルは,交通行動モデルを対象とした国際学会であるInternational Choice Modelling Conference (ICMC) 2022 にて口頭により発表した.さらに,提案モデルをまとめた論文は交通行動モデルを扱う国際誌であるJournal of Choice Modellingに投稿が受理された.2023年度では,この2022年度に開発した新たな離散選択モデルを拡張する形で,離散選択モデルとその選択肢集合形成モデルの両方に生じる内生性バイアスを同時に補正する大規模なモデルを開発した.具体的には,提案モデルは (a) 選択肢集合の形成,(b) 選択肢集合形成における選択肢相関,(c) 選択肢集合を所与とした離散選択,(d) 離散選択における選択肢相関,(e) 選択肢集合形成と離散選択との間の未観測異質性,(f) 説明変数に含まれる内生変数に対処する.提案モデルを米国の世帯を対象とした交通調査であるNational Household Travel Survey (NHTS) データへ適用し,提案モデルはデータに生じていた居住地自己選択による内生性バイアスの補正に有効であることが示された.また,これら得られた成果を世界交通学会 (World Conference on Transport Research) にて口頭発表を行った.
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