今年度は、主に、「税料債の異同」という視点から、国家の国内・国際に対する基礎インフラの投資・建設と先端科学技術の開発・利活用に関わる、それぞれの租税法上の理論問題についての考察を行った。いわば「公金の投下」によって構築されてきたこれらの領域が持つ公共性と公平性の背後に、いかなる法論理や法解釈が存在しているのかを分析した。また、「防衛費増税議論」や「社会保険という名の無限増税議論」などに注目することで、租税における「日常性」(サブスク性)という特徴を強調し、安易な「社会連帯論」に陥らないような理論を構築することを試みた。さらに、今年度は、実り多い国際学術交流が実現できた。2023年12月には、中国の金融貨幣の専門家を招き、インフレ現象とそれにおける貨幣の役割に関するミニ国際シンポジウムを開催した。物価高騰と円安の進行のため、海外調査はフランスのみに限ったが、有益な情報収集ができた。2024年3月6日から3月16日までの現地調査では、OECDのパリ本部のタックス・ポリシー部門で、最新の国際課税の政策についての話を伺うことができた。また、フランスの租税法学者、財政法学者、薬事法学者、遺伝学学者などと、EUのGRPR制度や、AI課税の行方、DST課税の限界、フランス地方財政の問題、フランス美術品市場の課税状況、フランスの公共文化財政策、先端生殖医療技術が人口問題への寄与度と社会保障法との関係などについての意見交換ができた。これらの情報を通じて、国際的な視点から税務政策や公共財政に関する理解を深めることができたとともに、先進的な法解釈や政策の展望について洞察を得ることができた。
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