研究課題/領域番号 |
22J01403
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
特別研究員 |
渡辺 恵 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2026-03-31
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キーワード | 高解像度 / リモートセンシング / 陸水 / 水温変化 / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
気候変動は雪氷融解を促進し、融解水の流入する河川に多くの人口が依存しているため、下流地域への甚大な影響が懸念される。また、気候変動などによる水温上昇は、水質や生態系に多 大な影響を与え、発電所の冷却水や漁業などの人間活動にも負の影響を与える。従って、本課題では、気候変動による雪氷融解等の雪氷圏の変化を考慮した、現在から将来における全球の 河川・湖沼の水温変化を解明することを目的とする。膨大な高解像度衛星画像を解析し、全球30m解像度の水温データベースの開発を行い、現在までの河川・湖沼の水温変化をモニタリン グする。また雪氷融解を考慮した水温変化を算定するため、氷河モデルを組み込んだ全球統合水温モデルを構築する。衛星観測から開発した水温データベースを用い、統合水温モデルを精 緻化する。構築した統合水温モデルにより、気候変動下の雪氷融解による河川・湖沼の水温変化への影響を解明し、その将来予測を行う。 当該年度では、研究目的を達成するための基本情報となる高解像度水面マップの開発に取り組んだ。データの豊富な日本を対象として、航空写真を用いた高解像度の水面検出のアルゴリズム構築を行なった。既存の光学センサの情報を用いた水面検出手法では、近赤外の情報を必要とするのに対し、本手法ではRGB情報のみから水面検出を可能とするアルゴリズムの構築を行なっており、今後、航空写真のみではなく、種々の高解像度の光学センサを持つ衛星画像に応用し、水面検出の全球展開を可能とする。高解像度水面マップの開発により、小規模の湖沼や河川についても外形データが利用可能となり、水温変化の解明に繋がる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本域において、約60cm空間解像度の1000万枚以上の航空写真を用いることで高空間分解能の水面マップの開発に取り組んだ。航空写真からはRGB情報しか得られないのに対し、空間解像度10m-30m程の比較的粗い解像度の相対標高などを含む水面参考データを組み合わせ、近赤外情報を用いることなく、約60cm解像度の定常状態の水面マップの開発を行った。水面検出の方法として、ベイズ推計を用い、水面参考データを条件付き確率や事前確率として情報を活用した。これにより、30m解像度の衛星を利用した水面マップやオープンストリートマップなど既存の水面マップでは捉えることのできなかった小河川についても水面マップを作成することに成功した。この内容について、すでに学会発表を行い、現在論文の投稿準備を進めており、研究は十分に進展している状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで構築した光学センサの情報を利用した水面検出のアルゴリズムの全球展開を行い、全球規模で小規模な湖沼・河川を含む全ての陸水の高解像度水面マップ開発を推進し、陸水の水温変化解明のための基本情報とする。開発した水面マップに基づき、Landsat衛星を用いて陸水の水温変化データベースの開発、統合水温モデルの開発を順次推進し、水温変化の解明に努める。
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