研究課題/領域番号 |
22J10016
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大久保 らな 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 周辺視野 / 色知覚 / 情景認知 |
研究実績の概要 |
視覚的注意の影響を、信号検出理論における感度とバイアスの両方の観点で受けながら、周辺視野における色知覚が形成されるということを、約四十人の参加者を用いた行動実験から明らかにした。そして、この成果を国際的な査読付き学術論文誌である Journal of Vision誌で発表した。 また、周辺視野における色知覚のメカニズムの解明という目的を広い観点からとらえなおし、情景知覚と色知覚の相互作用を明らかにすることを目標として、周辺視野における情景知覚に対し、周辺視野に色情報が存在することがどのような影響を与えるかということに関して、一般成人を対象に実験室実験を実施し、行動データを取得した。 行動データから得られた研究成果は以下の2点に集約される。 (1) 周辺視野で情景のカテゴリーを判断するとき、色がついていると、ついていない時よりも判断成績が高いことが先行研究で報告されている。本研究では、情景を中心視野と周辺視野とで独立に提示した場合でも、情景知覚に色の効果があることを発見した。これは、周辺視野では色感度が低いとされているが、このような状況であっても、情景知覚に寄与するほどの色情報が取得されていることを示している。 (2) 先行研究においても、(1)で調査した中心視野条件においても、情景知覚に色が寄与するのは、自然画像のみで、人工画像は色がついていてもついていなくても成績が変わらなかった。画像分析の結果、このような画像種類の差は、低次の視覚統計量の違いによって説明できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
色を厳密に制御した心理物理実験を行うための設備を整え、多数の実験参加者を集めて心理物理実験を実施した。その結果、周辺視野における色知覚の特性について、視覚的注意の影響をどのように受けるかということを明らかにすることができた。また、周辺視野における情景認知に対する色の影響を調べた実験も実施し、こちらもさまざまな偏心度での情景知覚の特性について心理実験データに基づく検討を進められており、全体として研究計画をおおむね順調に遂行することができている。 なお、本年度に得られた研究成果については、国際的な査読付き学術論文誌である Journal of Vision誌で発表したほか、Psychonomic Society’s 63rd Annual Meeting(2022年11月)、日本基礎心理学会第41回大会(2022年11月)、日本心理学会注意と認知研究会(2023年3月)といった国内外の学会にて発表を行っている。 このように、当初の研究計画に沿って研究を進め、対外発表を通じて成果を発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、周辺視野における色知覚と情景知覚は、互いに相互作用して、外界の表象の構築に寄与していることがわかった。特に、周辺視野における情景知覚に対する色の貢献を踏まえて今後は、具体的にどのような色情報がどのように圧縮された形式で周辺視野で取得されているのかを、心理物理実験によって検討する。 また、なぜ色の効果が自然画像に限られるのか、どの視野においても自然画像に限られるのかということも、画像分析技術を組み合わせながら、検討する必要がある。 これらの周辺視野における情景知覚に対する色の効果に関する成果を、学会発表を重ねながら、最終的には学術論文としてまとめることが目標である。
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