研究実績の概要 |
令和5年度は、前年度明らかにしたSleeping beauty, Prince論における指標の検証・評価を受けて、Sleeping beautyをより早く発見するための工学的なアプローチに向けた研究の発展を行った。これまで引用数で議論されてきたSleeping beauty論に、readershipと呼ばれる論文のダウンロード数の観点を初めて加え、革新的な発見が睡眠してしまう理由が、当該研究が着目されていたものの引用に結び付かなかったことによるものであることを初めて示した。本成果は、研究の多様な評価軸を示す取り組みとして横幹連合カンファレンスでの口頭発表に結びついている。本課題を通じて得られた知見は、広く科学における成功のメカニズムの研究へと広がりを持つものであり、Science of science領域のトップ会議であるICSSIやISSIでの口頭発表の他、その研究成果を活かした博士研究は令和5年度の工学系研究科長賞を受賞した。 さらに、本研究成果を通じて得られた、Sleeping beautyから分野が形成されるプロセスと、その睡眠段階の研究者の審美眼の存在の示唆を、Research Intelligenceの活用に向けた取り組みに応用した。日本で初めてとなるScience of science研究会において招待セミナーを行った他、電子情報通信学会ICS-NLC研究会でも招待講演を行うなど、学術における多様な評価軸に関する分析結果を広く研究者コミュニティに伝えており、2023年度の「東京大学統合報告書」においてもコラムの形で紹介された。 総じて本プロジェクトは、Sleeping beautyを科学の多様な時間軸の指標として活用可能であることを示し、その影響力が幅広い分野に及んでいること、その早期発見に向けて引用に先駆ける研究活動指標を活用する重要性を示した。
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