昨年度、ヒラムシの体内でTTXが生産されるのか、その生産には細菌が関与するのかを明らかにするため、薬剤を投与した環境でヒラムシを飼育した。その結果、TTXはヒラムシ体内で生産され、その生産には細菌が関与することを示唆するデータを得た。そこで、当該年度は飼育試験に供する個体数を増やす再現実験および薬剤投与環境から薬剤を投与しない環境に戻し、TTXを再生産するかを調査した。その結果、再現性が得られ、ヒラムシ体内中で行われるTTX生産には細菌が関与することを示した。また、薬剤投与環境から薬剤投与しない環境に戻してもTTXは生産されなかったため、少なくとも飼育海水および餌料からはTTXの生産に関与する細菌が供給またはTTX生産に至るほどの細菌叢の回復はされなかったと示唆された。加えて、当該年度は前年度のアンプリコンメタゲノム解析結果からより候補の細菌を絞るため、これまでに集めてきた有毒のツノヒラムシ属のヒラムシの3種(計7個体)および無毒の有毒のツノヒラムシ属のヒラムシの1種(計4個体)のショットガンシーケンシングデータを用いて比較メタゲノム解析を実施した。その結果、前年度候補となった細菌の中でもある特定の細菌属Xが有毒種3種で共通して検出され、他の候補となった細菌属よりも検出量が多く、無毒種ではほとんど検出されなかった。 薬剤投与飼育試験でおおよそのTTX産生時期を特定できたことから、これまでに集めた各種成長段階のヒラムシ試料のうち、大量生産が行われていると思われる成長段階の試料を用いて抗TTX抗体を用いた免染組織化学染色を行ったところ、前年度に行った成長段階の試料よりも蛍光強度が強く、免疫組織化学染色の観点からも多量のTTXを保持していることが示唆された。また、前年度に行った免疫組織化学染色の結果については現在国際誌に投稿中である。
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