研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭葉変性症(FTLD)などの神経変性疾患の患者の一部では、神経細胞内にFUSからなる封入体が認められる。本研究では、この封入体が神経毒性を発揮することが疾患の原因となるとの仮説に立脚し、FUSの凝集体形成機構および凝集体形成による神経毒性発揮機構の解明を目指し、研究を遂行した。1)培養細胞において、FLAGタグを付加したFUS P525L (家族性ALSで認められる変異) を強制発現させると生じるFLAG陽性の凝集体様構造物が出現し、前年度の研究でFUSの可溶性を上昇させることを見出していたallS変異 (FUSのlow-complexity domain内のチロシンを全てセリンへ変える変異) の導入やCK1δ/εの共発現を行うと、減少することを見出した。これはFUSの可溶性が、細胞における凝集体形成にも関連している可能性を示唆するものである。2)CRISPR/Cas9システムを用いて内因性FUS遺伝子をノックアウトした培養細胞を用いて、FUSの部分欠損変異体について可溶性の検討を行ったが、いずれも全長が保たれたFUSよりも可溶性が上昇した。FUSのN末側とC末側との相互作用が可溶性の低下をもたらす可能性を考え、異なる部分欠損変異体の共発現を行ったが、可溶性に明らかな変化は認められなかった。これらのことから、FUSの全長が保たれていることが、可溶性が低下する必要条件である可能性がある。3)2)で作製した内因性FUSノックアウト細胞と、ノックアウトしていない細胞を用いてRNA-seqを施行し両者の比較を行うことで、FUSが影響を与えるRNA群の同定を試みた。公共リポジトリに保存されているRNA-seqのデータも用い、同様の検討を行った。
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