研究実績の概要 |
前年度末に実施した在外4館(British Library, Bodleian Lib., Banaras Hindu University, Oriental Research Institute Mysore)での写本・稀覯本調査からは、ガウディーヤ法学派内外の未出版テキスト、相続法小論稿などのほか、1954年に行われたパンディット集会で作成・出版されたと推定されるKalyapaddharmasarvasva(カリ期(ヒンドゥー教的終末期; 現代)における窮迫時のダルマの全て)を閲覧・入手した. 最終年度(2023年度)では後代のダルマ文献で盛んに議論されるようになりKalyapaddharmasarvaでは主要テーマともなっている終末期タブー論(kalivarjya)をキーワードに、とりわけガウディーヤ法学派の動向に着目しつつ調査を深めたほか、ヒンドゥー教徒の外婚制と関係するサピンダ親族性・サゴートラ親族性についての文献を渉猟した.その成果はニューズレター(1件)、研究会(1件)、国際学会(1件)、博士論文などで公表した.嫡出子以外の代理的子供に対する禁忌論、逆縁婚(levirate marriage)に類似するニヨーガ(niyoga)、異身分婚・再婚へ対する禁忌論などのヒンドゥー法における関係性、変遷史の一端が明らかとなった. 研究期間全体としては養子制・外婚制などが近現代におけるヒンドゥー法や慣習と密接に関わる様子が示唆され、藩王国や植民地政府が法的問題についてパンディットへ依頼し作成された法裁定書やとりわけ19世紀半ばごろまでの判例との関わりなど、ヒンドゥー法の理論と実践の繋がりを明らかにする研究への可能性が示された.
|